2014.04.17 16:33

【学生記者が行く】「日本ポリグル」小田兼利会長に聞く

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記者:増田智有

日本ポリグル(大阪市中央区)は、ポリグルタミン酸の成分を利用した粉末状の水質浄化材メーカー。低価格で簡単に使用できるため開発途上国での販売が中心だ。1人当たりの年間所得が3000ドル未満の人を対象に、現地の生活水準の向上への貢献を目指す「BOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)」ビジネスでは日本企業のパイオニアとして知られる。創業者の小田兼利会長に事業の現状などを聞いた。

――創業のきっかけは

 「阪神・淡路大震災で生活用水に困ったことだ。工学博士号を持ち、研究開発を専門とする自分の技術で、目の前の池の水をきれいな水に変えられたらと思った。そのとき納豆のネバネバ成分であるポリグルタミン酸に、凝固・浄水効果があることを知った。研究を重ねて6年でようやく現在の製品ができ、2002年に日本ポリグルを設立した」

 ――海外進出は

 「製品を濁った水に少し入れてかき混ぜると、あっという間に透明になることが注目を集め、国内のさまざまなメディアに取り上げられた。そこで、水質汚濁問題の解決に役立ててもらおうと日本の行政に働きかけたが、見向きもされなかった」

 「04年にスマトラ島沖地震で津波の被害を受けたタイ政府からの要請を受け、製品を無償提供したところ、非常に高い評価を受けた。07年には、サイクロンの被害に遭ったバングラデシュから要請を受け、製品を無償提供した。製品への需要は大きく、すぐに販売が決まった。現地の団体が仲介する予定だったが、『手の届かない価格になってしまうから直接販売してほしい』という人の声を受けて、事業が始まった」

 ――なぜ途上国支援に取り組むのか

 「はじめは自社の利益を考えていた。しかし、途上国の純朴な人たちと付き合ううちに心が変わり、顧客を大切にしなければと思った。自分の技術が必要とされる喜びは大きく、多くの人に良い製品を届けるため、低価格で販売することにした」

 「日本人を雇用していては収益を計上できないので、現地の人を雇用した。すると主体的に働き、自立しようとする人の力が社会を変えることに気づいた。常に壁にぶつかりながらだったが、このビジネス形態が後にBOPビジネスと呼ばれるようになった」

 ――国内事業は

 「海外事業が軌道に乗ってきた08年、国内の一部の当社幹部と社員が架空売り上げを計上し、6億8000万円の損失を出した。会社の信用が一気に傾き、倒産もちらついたが、途上国で毎日ギリギリの生活をしている人たちを思うと、意地でも自分で借金を返す覚悟ができた」

 ――今後の展望は

 「貧困層の人たちが主導する水ビジネスを展開し、世界中から貧困をなくしたい。途上国でのビジネスは文化や習慣の違いなどに起因する困難が非常に多く、途中で断念してしまう企業も多い。当社のバングラデシュでの事業も困難がつきまとったが、どんな状況でもあきらめず粘り続けた。その結果、『あなたには参った』と同国ポルグナ県の知事に言われたことは最大の喜びだ。中小企業は少しでも諦めたらすぐつぶれてしまう。困難な状況でも必ずどこかに突破口があるので、自分の限界を決めずに最後までやりきらなければならない」

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記者プロフィール

増田智有

増田智有

役職 : -
在学中 : 大阪大学外国語学部(3回生)
出身地 : -
誕生日 : 1992年6月15日
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