2014.04.17 16:50

「人間愛」で社会に必要な企業へ 積水ハウス

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記者:服部英美

住宅業界のリーディングカンパニーとして1990年代から、環境配慮をはじめとするCSR(企業の社会的貢献)に取り組み、成果を上げている積水ハウス。その原動力には「相手の幸せをわが喜び」とする企業理念「人間愛」がある。環境性能に優れた住宅の普及など、持続可能な社会構築に向けた事業を加速する阿部俊則社長兼COO(最高執行責任者)に、環境と経営との関わり、企業のあるべき姿などをうかがった。
――地球環境の保護に力を入れていますね

 「当社は80年代から自然エネルギーを利用した住宅の販売をスタート。99年には、全社的なプロジェクト『環境未来計画』を策定しました。その後は、遮熱断熱複層ガラスの標準化や、太陽光発電システム、燃料電池の積極採用に取り組んできました。さらに、環境に配慮した住宅性能の向上だけでなく、工場や建築現場における資源循環の仕組みをつくったり、『5本の樹』計画と名付けた生態系ネットワーク復活の推進など、さまざまな取り組みを行ってきました」

――08年には環境省から『エコ・ファースト企業』の認定を受けています

 「日本では、消費される電力の約3割を、家庭部門で占めているんです。それを削減するために住宅業界が果たすべき役割はCSRの観点からも大きい。環境配慮型住宅の普及に努めてきたことが認定の大きな理由ですね」

 ――4月に発売した戸建て住宅「グリーンファースト ゼロ」も好調とお聞きしました

 「省エネと創エネの両技術を組み合わせ、エネルギー収支ゼロを目指した住宅が『グリーンファースト ゼロ』。今年度は、新築戸建て住宅の40%を『グリーンファースト ゼロ』にしようという目標を掲げましたが、なんと8月には63%に達しました。今年度の目標も50%に上方修正しました。お客さまのニーズに合致したということと、『社員もブランド』との信念で、相手本位の姿勢を大事にする社員教育を続けてきたことも、好調な販売につながっているのではないでしょうか」

 ――「環境」と「経営」が結びついてきたとも言えますね

 「かつては、だれも環境への取り組みが経営戦略につながると思わなかったでしょう。しかし、リーマン・ショックのあと、家庭からの二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた『グリーンファースト戦略』を打ち出して以来、着実に『環境』と『経営』がリンクしてきました。環境技術によってお客さまが得る『快適性』『経済性』『環境配慮』という3つの価値を、当社の営業担当が具体的に数字で伝えられるようになったことも大きいですね。新築住宅では、太陽光発電、燃料電池を搭載する『グリーンファースト』が83%を占めています」

 ――スマートタウンにも期待がかかります

 「環境・快適や安全・安心、エネルギーなど4つのキーワードで豊かな暮らしを実現する『スマートコモンシティ』をいち早く普及させてきました。これには先行投資が必要ですが、快適な暮らしの提供だけでなく、長期的にはランニングコストを低減できます。また、ライフサイクルコストを節約できるなど、お客さまへ付加価値を提供することができる。当社の場合、環境への取り組みと業績向上は連動していますね」

相手の喜びをわが喜びに

 ――「社会に必要とされる会社」を目指してきました

 「創業以来、『人』を重視した経営を進めています。創業30年目の89年には、従業員も含めたディスカッションを経て、企業理念『人間愛』を制定しました。これにもとづき『お客さま満足』『従業員満足』『株主満足』の3つをCSR活動の基本方針としました。同時に、コンプライアンス(法令順守)という“守り”だけではなく、“攻め”のCSRとして、環境貢献、社会貢献に取り組むようにしています。『ダイバーシティー経営』もその1つですね」

 「企業理念の人間愛とは、相手の幸せを願い、その喜びをわが喜びとする奉仕の心。企業を経営する上では、顧客の幸せを第一と考え、自分たちも幸せになる『Win-Win(双方ともうまくいくこと)』の関係を築くことがやっぱり大事ですね。これは、古くからある近江商人の『三方良し』(売り手良し、買い手良し、世間良し)にもつながるといえるでしょう」

人材こそが企業の生命線

 ――ご自身の「人間愛」はどのように形成されましたか

 「子供のころ、何か良くないことがあり、人のせいにしてしまったとき、親に怒られ、『本質は自分にある』と強く言われた思い出があります。仕事の目的や進め方は、すべて相手本位で考え、仕事の成果の善しあしの責任は自分自身に求めてきたのも、幼少期の思いが根底にあるのかもしれません。私はリーマン・ショックが起きた年に社長に就きました。経済環境は最悪でしたが、それを理由にしても何もできません。困難な状況に陥っても、本質は自分たちにあることを社員に伝えながら、自分自身にも言い聞かせ、今日までやってきました」

 ――経営での信条は

 「江戸時代の農政家だった二宮尊徳の教え『道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言』を、社員に伝え続けています。企業というのは、コンプライアンスの取り組みが万全でも、業績を無視した経営ではつぶれる。かといって、道徳を無視したら社会から必要とされなくなる。その考えを社員全員に浸透させるため、それを愚直に繰り返し話している。企業にとって一番大事なのは人材。その育成にこれからも力をいれていきたいですね」

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記者プロフィール

服部英美

服部英美

役職 : 広報部リーダー
卒業 : 大阪大学文学部
出身地 : 愛知県名古屋市
誕生日 : 1990年7月14日
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