2014.04.25 20:35

記憶をつなぐ光の回廊、阪神淡路大震災の犠牲者に鎮魂

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記者:笹山大志

神戸市中央区の神戸・元町の旧居留地からメイン会場につながる三宮・東遊園地までの夜空を約20万個の電球が鮮やかに彩る。幾何学模様で構成された電飾の様子から「光の彫刻」とも呼ばれる。阪神淡路大震災で犠牲者の慰霊と鎮魂の意を込めて、毎年12月に開催されている「神戸ルミナリエ」は今年19回目を迎えた。今年のテーマは「光の記憶」。ルミナリエの光を通して、5年10年と薄れゆく震災の記憶を語り継ぐことに思いを馳せる人や企業は少なくない。(



冬の始まりを知らせる寒い雨が降りしきる中「ルミナリエ存続のために皆さんの協力が必要です。募金をよろしくお願いします」とひときわ大きな声で呼びかける女性がいた。神戸市内の高校に通う女子高生の木下さん(18)だ。

阪神大震災の犠牲になった父を追悼するルミナリエを存続させたいとの思いで、初めて参加したという。その思いに応える募金者はあとを絶たない。「父も喜んでいると思う。来年も再来年も続けていきたい」と笑顔で語った。

ルミナリエ存続にかける思いは地元神戸の企業も同じ。住宅設備メーカーのノーリツ(神戸市中央区)は震災当時から毎年、社員の有志で集まった募金と会社からの協賛金でルミナリエを支援している。昨年からは、ルミナリエ開催期間中の清掃・警備ボランティアを始め、今年は100人ほどが参加した。

その一人、同社CSR•環境推進室の亘秀明(わたり・ひであき)室長(50)は「募金だけでなく、社員自ら現場に赴くことで、ルミナリエ存続に対する思いもさらに深まる」と話す。

支援の根底には、地元企業としての責任感が強かったという。「『ノーリツの製品を必要としている。頑張って』といったお客様からの声は私たちの励みになった。神戸に生かされてきた企業として、恩返しができたらと思い、ルミナリエ支援を始めた」と亘室長は語った。

同社の支援は協賛金やボランティアに留まらない。2011年4月から太陽光発電システムの製造販売を始め「太陽光を何に変えようプロジェクト」を始動させた。その取り組みの1つ「太陽光をルミナリエの光に」は自社工場や事業所などに設置した太陽光パネルで発電した電力を金額換算し、その一部を神戸ルミナリエに寄付している。

終わりに亘室長はこう締めくくった。「ルミナリエの存続だけでなく、ルミナリエの本来の意義を感じてもらうことも今後の課題だ。犠牲者の尊い命を忘れないためにも、更に取り組みを深めたい」。犠牲者を思う光の回廊は来年も神戸の冬を照らす。

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