2014.04.25 20:37

まずは声から 患者さんが元気になれる朗読会

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記者:笹山大志

病気を患う人同士が朗読を通じ、交流を深め合うワークショップ「朗読で患者さんを元気にするプロジェクト」が昨年11月10日に、大阪市内で開かれた。朗読の録音スタジオ兼専用ホール施設を運営する一般財団法人軽井沢朗読館(長野県北佐久郡)と、NPO法人キャンサーリボンズ(東京・中央)が共同で開催した。同じ境遇を持つ人が集まり、語り部のプロから朗読の直接指導を受けられるのが人気の理由だ。ぜんそくや乳がん、糖尿病の患者とその家族を対象とし、東京と広島に続き3回目の開催。糖尿病患者を中心に約30人が集った。


「ある朝、熊は泣いていました…」。軽井沢朗読館館長を務める朗読家の青木裕子(ゆうこ)さん(63)の朗読が始まった。聴き終えた後、参加者は8グループに分かれ、グループごとに選んだ本を朗読し、感想や気付いたことを話し合う。

青木さんは各テーブルを回りながら「上手く読もうとするのではなく、自分の声を意識して、息を感じながら読んでください」と参加者に声を掛ける。朗読を終えた参加者たちは「内容をしっかり人に伝えないといけないので、思いが必要」「黙読よりも内容が理解しやすい」「久しぶりに朗読した。声をお腹から出すと清々しい気持ちになる」と朗読の良さを口々に語っていた。

 同イベントには「言葉と声の力で患者さんを元気にしたい」という主催者の思いが込められている。「同じ病気を抱える参加者同士だからこそ、打ち明けられる悩みや思いがあり、言葉にすることでつらい気持ちが楽になる」とキャンサーリボンズ副理事長の岡山慶子さん(69)は語る。

キャンサーリボンズは「がん患者が少しでも自分らしさを出せる生活の実現」を目指し2008年に設立され、患者の生活支援を行っている。一方、軽井沢朗読館は「誰もが自由に声を出して好きな文章を読んでほしい」との思いから2010年に設立された。

岡山さんと青木さんは古くからの友人同士で、2012年に朗読CD「あなたには、明日、生きる意味がある」を共同で発売。購入者からの「自分でも朗読したい」「朗読を習いたい」という反響をきっかけに、参加型のワークショップを開催することを決めた。

ワークショップ後打ち解けた参加者たちは、闘病を続ける上での悩みや心配のほか、たわいのない世間話を共有し合っていた。最後に、青木さんは今後の抱負としてこう話した。「仲間をつくることに消極的な人に、作家の言葉を借りながら自分を表現できる朗読の場をたくさん提供していきたい。そして、朗読の楽しさを広めていければ」。

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