創業65年のサンフレックス(大阪市東成区)は、モーターの回転を伝達するフレキシブルシャフトメーカー。「切る」「削る」「磨く」といった加工に使うやすりや砥石(といし)などの工具も供給している。2代目社長の宮井賢次氏に事業の現状や今後の展望を聞いた。
――社長就任時を振り返って
「当初の予想よりも会社を継ぐには10年ほど早かった。創業は私が生まれる前の1947年。車のスピードメーターの針を動かす部品を作っていた。幼少のころから父親の会社を継がないといけない、と思いながら年齢を重ねた。最初に就職したのは車の部品卸会社。将来、自社に還元できるよう自動車の仕組みなどを学んでおきたいと思ったからだ。当社には25歳で入社。働き始めて9年がたった34歳のとき、先代社長の父が、がんで亡くなり、社長に就任した」
――苦労したことは
「一番苦労したのは会社の経営を教えてくれる人がいなかったことだ。勉強する場を求めて多くの講演会やセミナーに参加したが、学びたいことが学べなかった。ある日、経営者たちが真剣に話し合う中小企業家同友会に参加した。『会社はもうけを生み出すだけでよいのか』『なんのために仕事をするのか』を題材に話し合っているのを見て、自分が学びたい場所はここだと感じた」
「それまで以上に『社員の幸せ』『経営指針の作成』について真剣に考え始め、松下幸之助さんの『不況下の十訓』を読むなど経営で成功した人の考えを少しずつ参考にした」
――経営で大切にしていることは
「人を生かし、考えて常に技術を向上させる智、コミュニケーションを大切にする和という『人・智・和』の考え方を大事にしている。海外メーカーに、資源や人件費の関係から価格面で負けることもあるので、顧客からの信頼で勝負している。販売と製造の間で連絡ミスなどがあると、会社の存続問題につながってしまう。そのため、経営の意識を持ってもらうために、年に1度、経営報告を社員の口からしてもらう。他にもソフトボール大会を開くなどして社員同士のきずなを強めるように心がけている」
――事業の特徴は
「多様化する顧客のニーズに対応できるよう多品種少量生産を心がけている。私たちが扱うフレキシブルシャフトは、芝刈り機やコピー機、医療器具、業務用のネギ切り機など幅広い分野で使われる。同じ商品を扱うメーカーでは在庫の問題から、少ない数の生産は受け付けない場合がある。そのために顧客とは電話や直接会いに行くなどして綿密に相談し、注文にあった商品を提供している」
――今後の展開を
「これからも日本人の感性に働きかけるような商品を作りたい。自社では先端工具として、やすりや砥石なども取り扱っている。海外の商品と比較すると値段は2倍くらい高いが、プロが使ったときに優位性をわかってもらえる自負はある。価格ではなく日本人の長所でもある細かい仕事を行いたい」
「私たちが扱う商品は芝刈り機のモーターと芝を刈る部分の歯とを接続していたり、コピー機の紙にインクを塗るローラーとモーターをつないでいたりと、一部の部品ではあるが消費者の目に見えない縁の下の力持ち。日本の産業界を支えていきたい」
※「フジサンケイ ビジネスアイ」2012.10.29(西日本版)掲載
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