2012.11.12 20:00

「ファイコム」浅野由裕社長に聞く

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記者:橋本翔一朗

企業のウェブサイトの制作や運営、広報ツールの企画・制作を行うファイコム(大阪市北区)。すべての事業の根底にあるのは、コミュニケーションを何よりも大切にする姿勢だ。浅野由裕社長に起業の経緯や事業内容、今後の展望を聞いた。
新しいコミュニケーションを形に

 ――会社立ち上げまでの経緯は

 「1989年に広告代理店に入社したが、ちょうどその頃パソコンが少しずつ世の中に普及してきた。広告制作の作業がデジタル化していくのを目の当たりにし、8年間勤めた会社を辞めて、パソコンのグラフィックソフトを作る会社に転職した。だが、その会社は入社1年で倒産。困惑したが、社員3人で98年にファイコムを設立した。もともと、社長になりたいということを公言していた。それは技術革新が起こり、広告に携わる人たちの環境も変化する瞬間を見てきた中で、枠に捉われない『人に何かを伝える仕事』が面白くなるだろうと感じていたからだ」

 ――立ち上げ時の苦労は

 「資金や人とのつながりがあまりない状態で会社を立ち上げたため、大変苦労した。最初の頃は、決算も赤字が続いた。いろんな場所へ出向き、人に会うようにして、自分たちのやってみたいことを周りに伝えていった。徐々に自分たちの考えに共感してくれる人が増えてきて、仕事をもらえるようになっていった」

 ――事業内容は

 「全事業の約9割がウェブの仕事だ。企画力に自信がある。企業のホームページを企画・制作したり、スマートフォン(高機能携帯電話)用のアプリを提供したりしている。コンセプトを大切にし、顧客とコミュニケーションをとりながら、一緒に作り上げる。仕事のひとつに2001年から始めた江崎グリコの『ポッキー友の会』というケータイファンサイトの運営がある。そこでは“ゲーミフィケーション”と呼ばれる、ゲームを通じて生活者が企業や商品と深くかかわり、大人から子供まで楽しんでもらうような仕掛けづくりを行っている」

 「一方で、クリエイターやものづくり企業を取り上げる、大阪府・大阪市のフリーペーパーの企画も行っている。エリアを限定し、ビジネスマッチングができる点が、フリーペーパーの良さだと思うし、産業とデザインを引き合わせて、地域を盛り上げたい」

 ――大事にしている考えは

 「起業から14年。自分の会社だけでなく地域も大事にしないといけないと考えるようになった。8人の社員が働いているが、雇用する責任をすごく感じている。経営者は人に注意されることが少なく、独善的になりがちだ。中小企業家同友会に参加し、他の経営者から刺激をもらい、そこでの学びを自社の経営に生かしている。経済は企業の集合だと考えていて、志の高い経営者が増えていくことが、社会にとっても重要だと思う」

 ――今後の展望を

 「12月に自社ホームページをリニューアルし、顧客がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との連携でもっと当社と関われるようにしたい。今までなかったコンテンツを入れるつもりだ。ネットの発展に伴い、コミュニケーションの方法も激変しているが、顧客の目的や姿勢は従来と変わっていない。SNSなど新しい媒体のおかげで、今まで費用がかかってできなかったことも実現でき、手段の幅が増えたことで顧客に本当に適した提案ができるようになった。当社にしかできない面白い取り組みを、世の中に発信していこうと思う」

※「フジサンケイ ビジネスアイ」2012.11.5(西日本版)掲載

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記者プロフィール

橋本翔一朗

橋本翔一朗

役職 : 学生通信社代表
卒業 : 関西学院大学商学部
出身地 : 兵庫県姫路市
誕生日 : 1990年11月24日
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