若者と高齢者が交流することで孤独死を防ごうと関西各地でパッチワークのワークショップを開催するのは、デザイナーの村上史博(34)さんと丸井康司(36)さんだ。パッチワークとは余った布をつなぎ合わせて作る色鮮やかな作品だ。2人は昨年の7月に「patch-work」を立ち上げ、現在は月に1度ワークショップを開催する。教室では、主に60代以降の女性が講師を務め、若い人にパッチワークの魅力を伝えている。2人に活動を始めたきっかけや今後についての話を聞いた。−−活動を始めたきっかけを教えてください。
村上:母親のことがきっかけです。7年前に父を亡くし、それ以降一緒に暮らしていた妹も自立し、これから母一人で暮らすことになりました。新聞やニュースで孤独死や孤立死という言葉を見聞きすると、母の存在と重ねてしまい心配になりました。
一緒に暮らしたいと考えることもありますが、関西での今の生活があり難しいのです。母が趣味などを通して、生活している地域のコミュニティーの中で生き生きと暮らしていくことができればと、そんな思いが教室の立ち上げにつながりましたね。
−−どうしてパッチワークを選んだのですか。
村上:もったいないと感じていたことがきっかけです。私が勤めるインテリア会社の工場では、カーテンやいすなどを作るとで出てくる布の余りをすべて捨てていました。何かに再利用できないかと考えた時に幼少の頃、おばあちゃんがくれたパッチワークの作品が浮かんだのです。
でも、もらった時は嬉しいなと思う反面、デザインが流行に合わず持ち歩くには恥ずかしかったです。デザイナーとして働いているので、若い人がかっこいいと思うデザインを私たちが提案すれば、もらった家族も持ち歩くことができるのではないかと考えました。
高齢者が先生となって裁縫が苦手な若い人に教えることで世代間交流がはかれるとも思いました。丸井さんと2人、パッチワーク教室で勉強を始め、自分たちでワークショップを始めました。
−−ワークショップを開いてみて感じることは何でしょうか。
丸井:参加する女性がどんどん変化していくことです。若い人が参加するので教室に来るときにはおしゃれをする人が増えました。ある方は作った作品を自分の孫に渡すと『おばあちゃん、また作ってと言われました』と嬉しそうに話し、パッチワークをつくる姿勢がより意欲的になりました。
他にも指が動きにくかった60代の女性はパッチワークをすることで徐々に指が動かせるようになり、元気になっています。パッチワークをしながらコミュニケーションがとれるので「今日はあの人来てないね」などの会話を通して見守りの役割も果たしています。このような変化を見ることで今、自分たちのやっていることがどんどん形になっている気がします。
−−教室で使われる材料に工夫があると聞きましたが。
村上:地域の名産品を使うように心がけています。パッチワークに使う材料は、兵庫県で作られる播州織や播州そろばんの玉、淡路島の大量旗を使用しています。播州織は綿100%のシャツの国内シェア70%を占めている。ただ、生地は中国で作って輸入しているため、生産地が知られていません。地域の名産を使ったパッチワークを、地元の高齢者が作ることで地産地消にもつながります。
--今後について教えてください。
村上:現在続けているワークショップ事業に加え、じっくり地域に寄り添って交流を図ることのできる月2回の教室事業も行っていきたいです。生産者がわかるトレサビリティーのとれた作品をネットで販売していきたいと考えています。
教室事業では、高齢者の世代から孫の世代まで一緒に楽しむことのできるようなプログラムを考えていきたいです。使う素材も地産地消により力を入れて全国に教室を広げていきたいです。
私の出身の岡山は、いぐさやジーンズも有名です。自分たちの故郷の地場産業により目が向きやすくなるようなパッチワークを作りたいです。そして、地域の雇用を促進して、若い人が故郷で働く環境を作りたいと思います。
丸井:本当に切実なのは、男性の孤独死です。女性は地域に馴染みやすいが男性は地域の活動に参加しないことが多いです。だからこそ、男性が趣味として、参加できて自分たちの地域のコミュニティーに馴染むことのできるような題材を今後考えていきたいです。
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