2013.05.24 10:36

「ミュウシード」 河合德治社長に聞く

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記者:喜多元哉

訪問介護事業を行うミュウシード(大阪市中央区)は24時間介護付き認知症高齢者向けの「夢み寮」を、昨年から関西の2カ所で運営している。高齢者が共同で生活できるよう、所有するマンションの一部を共有スペースと個室に分けてリフォームした。寮の形態をとることで、食事の料金や共益費などを抑えることにも成功している。特別養護老人ホームの待機者数とマンションの空き室の両方の減少に向けて尽力する河合德治社長に、会社設立の経緯や今後の展望を聞いた。

家主と認知症患者を救いたい

――夢み寮建設までの経緯は

 「1981年に父の仕事を継いで『河合建具製作所』の2代目社長となった。賃貸マンションの内装改修を行い、個人ではマンションを経営していたが、高齢化のため若い借り手がつかなくなり、シニア事業に参入したいと考えるようになった。2000年の介護保険導入を機に高齢者住宅改修に一本化し、仕事は手すりひとつからでも引き受けた。その姿勢が評判となり、翌年からは介護のレンタル器具を扱いはじめ、10年には大阪市西成区を中心に活動する訪問介護事業所ミュウシードを設立した」

 ――大阪市西成区内の生活保護受給者は4人に1人ともいわれる

 「その中には24時間介護が必要な認知症高齢者もいるが、特別養護老人ホームは待機者が多く、他の高齢者施設は月に約12万の生活保護受給額では入所が難しいという実情がある。そこで、生活保護受給者や介護度3以上の認知症高齢者でも入所できるような仕組みを作りたいと考えたのが『夢み寮』だ」

 ――夢み寮とはどのような施設か

 「認知症や寝たきりの高齢者が、月約13万円で暮らす24時間介護付き寮だ。現在大阪市東成区と兵庫県尼崎市に2つある自社のマンションで運営している。階層のひとつを共有スペースと個室に分けてリフォームして、共同で高齢者が暮らしている。特徴は寮母制度を用いたことだ。ヘルパーが介護以外のサービスも行うと、介護保険料が必要になる。そのため自社のヘルパーを派遣する場合は、身体介護以外のサービスは寮母に担当させることにした。特に、限られた時間で行われる入浴介助の際には、寮母がその準備と掃除を担うことで、ヘルパーと利用者が入浴により時間を費やせるようになった。『ゆっくり入浴できた。ありがとう』と笑顔で感謝されることも増え、職員のモチベーションの向上にもつながり、離職率も減少した」

 ――ほかの価格を抑える工夫は

 「マンションのメリットを生かし、個室ごとではなく、ワンフロアをまとめて管理することで、水道代や電気代などの共益費、火災保険料を安くした。食事にも工夫している。透析中の人や糖尿病患者の食事は、医療の観点から栄養管理を行っている。それ以外の人に提供しているのは一般的な家庭料理だ。鍋やたこ焼きなどを利用者同士で囲んでもらうことで効率よく食事が用意でき、家族のだんらんのような空間もつくれている」

 ――今後の展望は

 「目標は、大阪府内で夢み寮を100カ所開設することと、マンションの家主が安心して貸せるような新たなモデルを提案することだ。孤独死した人の遺品などの処理は、家主にとって大きな負担になる。そのリスクを低減するため、警備会社と連携して孤独死をなくすような仕組みや、365日決まった時間に電話をかけて安否確認をする『見守り電話』を導入したモデル『安否確認住宅 夢み家』など、提案の幅を広げていく。今後ますます高齢化とマンションの老朽化が進み、空き室が増えていく。私たちのモデルを普及させることで、空き室を抱える家主と、住まいのない高齢者を救済していきたい」

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記者プロフィール

喜多元哉

喜多元哉

役職 : 元事務局リーダー
卒業 : 関西大学人間健康
出身地 : 兵庫県神戸市
誕生日 : 1991年4月25日
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