1982年創業の三嶋商事(堺市西区)は、さまざまなメーカーの介護食品の卸売りを行っている。5年前からネット販売を開始し、病院や高齢者施設だけでなく、自宅で生活する人に向けた展開にも尽力している。「介護食品の知名度を上げたい」と語る三嶋賴之社長はインターン生を受け入れ、介護食品の紹介動画を配信する子会社「C・S・BOM’S」の事業運営を学生に任せている。昨年の3月から半年間、同社のインターン生として働いた、大阪府立大学経済学部に通う平野雅也さん(22)。幼少のころから、革製品を扱う会社を経営する父親の背中を見て育ち、将来会社を継ぐことが当然のように親戚から言われてきたが、敷かれたレールに乗って進むことに疑問を感じていた。
就職活動を目前に、今までしたことのない挑戦をして自分の強みを見つけたいと思い、2012年12月にNPO法人JAE(大阪市北区)が開催したインターンシップフェアに参加。そこで経営者体験ができる同社のインターンシップに臨むことを決意した。
インターン初日に三嶋社長から「介護食品の認知度を高め、子会社の事業をビジネスモデル化させてください」と言われ、何も分からない状況から最初の1カ月間が始まった。毎日机に向かって事業計画を何度も作っては書き直し、やっとできあがった計画を社内で発表しても、目的や根拠について次々と質問され何も答えられなかった。
「何を指摘されたのかあまり覚えていません。ただ、自分のふがいなさに涙が自然と出てきました」と平野さんは当時を振り返る。ゼロから計画を立て直していた時に、三嶋社長から「大学の映画サークルに動画の撮影協力を依頼してみては」とのヒントを得た。
関西の大学で協力してもらえる団体を探し電話で依頼したところ、複数から快諾が得られ撮影が開始。病気のため塩分やカロリーの摂取を制限されている人を対象にした加工食品や、加齢に伴いのみ下しが困難になった人のためにとろみを付けたレトルト食品などを取り上げた。
メーカーの要望を学生に伝えたり、日程を調整したり、時には自ら出演したりと日々奔走した。「人と一緒に仕事をするなかで 、学生のモチベーションを上げることや、納期などの責任を果たすことに力を注ぎました。自分と同じ年代に介護食品について知ってもらえたことには、大きな意味があったと思います」と平野さんは話す。
インターン活動を通して経営者を経験し、父親の抱える仕事の辛さややりがいについて、父親と初めて語り合ったという。「今まで聞けなかった話を聞き、将来父親と一緒に働いてみたいという気持ちが強くなった」と平野さんは心境の変化を語った。
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