東洋製鉄(大阪市東淀川区)は、建設機械の前後重量のバランスを保つためのカウンターウエートを製造する。同社は、全国に7カ所の工場を展開。音頭(おんど)良紀専務に社員への思いや、ものづくりに関するこだわりについて聞いた。
――専務就任までの経緯を
「父が1957年に当社を創業した。高校生のころから会社の工場でアルバイトをして、ものづくりへの興味がだんだんと湧いてきた。82年に建設機械を製造するコマツに委託研修生として入社し、生産技術や工程管理を学んだ。当社へは84年に入社し、2年後から明石工場で工場長を務めた。その後、子会社の東洋建設に勤めて、97年に専務に就任。2000年に自社に戻ったとき、故郷に戻ったという気持ちがした」
――カウンターウエートに注目した理由は
「建設機械が重量物を持ち上げるとき、前に傾くのを防ぐために機械の後ろに重りを載せる。それがカウンターウエートだ。建設機械用として、1つで20キログラムから25トンまでの重りを製造している。創業当時は、鋳物(いもの)の原材料である銑鉄(せんてつ)を製造する工場だった。だが、父は材料よりも付加価値の高い製品を作りたいという思いがあり、1962年にカウンターウエートの製造を始めた」
――社業の状況は
「今では、国内外合わせて年間の生産総量は13万トンにのぼり、国内シェアはグループ全体で約70%ある。特に寸法などの精度にこだわり、『できそうでまねができない』ものづくりを心がけている。日本のメーカーが生き残るには固有の技術を研ぎ澄ませていくことが必要だと思うからだ。それを可能としているのは製造現場の中での小集団による改善活動。上から強制的にするのではなく、自主的に行えるようにしている」
――失敗から学んだことは
「明石の工場長に就いたとき、自分ですべてを決める必要があると思い、即断即決をしていた。今は、全社員が個々に考えて仕事を進める衆知経営に重点をおいている。当社では社員や工場の地域の人を大切にしている。出雲仁多(にた)工場は全員が正社員だ。鋳造で製品を作るが、自動化するのが難しく、匠の技術が重要だ。匠の技を身につけるには長年の経験が必要だが、地域採用を行い若い技術者を一から育て上げる。これは会社と社員の信頼関係によって成り立つ」
「近年、溶接などはロボットによる自動化技術が進んでいるが、ロボットを扱うのは人だ。匠の技術でもオートメーション技術でも必要なのは人。従業員には人生の過程として仕事をしてほしい思いがある。働くことは、人から『ありがとう』をもらうこと。当社で働くことで、より良い人生を歩んでほしい」
――新入社員の教育はどのように
「メディアは若者の悪いところを指摘しているが、必ずしも悪いばかりだとは思わない。電車に乗っていて、若者が自分より先にお年寄りに席を譲るのを見ると気持ちがいい。毎年新入社員には、まずあいさつを大切にすることを伝えている。若者の風を社内に吹かせることが第一の会社への貢献だ。どのような人を求めるかの条件は特にない。それぞれの個性を大切にし、『みんな違ってそれでいい』ということを知ってほしい」
――今後の展望を
「時代が変化していくなか、何十年か後にはカウンターウエートが世の中から必要とされない可能性もある。一つの製品にこだわらず、人を大切にするという思いをこれからの人に伝えていきたい。自分が受け継いできたことに付加価値をつけて若者に伝え、人づくりを行う会社であり続けたい」
※「フジサンケイ ビジネスアイ」2013.1.21(西日本版)掲載
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