デザインを通して震災復興や地域コミュニティーの活性化など社会問題の解決を目指す、2010年設立のNPO法人「Co.to.hana(コトハナ)」(大阪市住之江区)。事務所を構える北加賀屋エリアでは地域活性化のため農園を運営している。西川亮代表に法人設立の経緯や現在の取り組みなどを聞いた。
協働で地域に根差したデザインを
――社会問題の解決に興味を持ったのは
「高校2年生のとき、建築家・安藤忠雄さんの講演会で『カッコいいものを作るだけでなく、地域や社会をどうするか』と話すのを聴いて感銘を受けた。自分もデザインを通して地域と関わりたいと思い、大学で建築を学んだ。大学4年生のときには『震災+design(プラスデザイン)』というコンペティションに参加。『震災のためにデザインは何が可能か』をテーマに、首都圏で震災が起こったとき、避難生活に生かせるデザインを考えた」
――阪神・淡路大震災で、避難生活の問題の一つが飲料水確保だったことに着目した
「災害時の医療現場で負傷者の重症度や緊急度を色分けで判別するトリアージタグを参考に、飲料水と生活用水、排水とを瞬時に識別できる『water triage(ウオーター・トリアージ)』を提案し、最優秀賞を受賞した」
――団体を立ち上げた経緯は
「社会問題に関わるデザインを手がけたいと思い、卒業後はフリーランスで活動を開始した。09年に阪神・淡路大震災を知らない世代のために、人と人とのつながりを育む『シンサイミライノハナPROJECT(プロジェクト)』を自らが主導して始めた。花びらの形をしたカードに震災の経験を書いてもらい、5枚を合わせて花を咲かせるという仕掛けだ」
「花びらに書くだけという気軽さが功を奏し、防災や震災のイベントに参加しない若者も参加してくれ、3カ月で3万以上のメッセージが集まった。社会貢献の活動をより広く継続的にしていきたいと思い、翌年12月にNPO法人として活動を始めた」
――現在注力している事業は
「12年から取り組んでいる『北加賀屋みんなのうえん』だ。北加賀屋にある遊休地や空き地を活用し、地域交流を活性化して町を元気にするため、土地を所有する地元企業やコミュニティーデザインを専門とするstudio-L(スタジオ・エル)(大阪府吹田市)と協力して始めた」
――10~63歳の地域住民約50人が参加し、トマトやカボチャなどを栽培している
「設備や環境も参加者が考え、水やりを分担制にすることで、月に数回の関わりでも野菜を育てて、収穫時にみんなで喜びを分かち合える。同じマンションに住みながら面識がなかった人たちが、農園を通じて新たなつながりを持つことができた」
――事業で大事にしていることは
「みんなで課題に取り組むことだ。育てた野菜をおいしく食べるために料理研究家が調理方法を指導したり、アーティストが農具や看板のデザインをしたりと、それぞれの得意分野を生かし合っている。私たちの農園の目的は野菜を育てることではなく、地域住民の交流や生きがいをつくることにある。参加者の思いや能力を引き出してつなげることで、当農園ならではの魅力が生まれる」
――継続的な活動にするためには
「社会問題を解決するときに必要となる経費の捻出が課題だ。取り組みごとの成果が地域に還元される様子が目に見えて形になることで、個人や企業、行政などに幅広く魅力を感じてもらえる。今後も活動を継続し、自分たちの取り組みがモデルとなって、国内外を問わずいろんな地域に広がることに期待している」
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