株式会社坂本設計技術開発研究所(大阪府枚方市)は、自動車や航空機などの部品製造時に用いる金型を設計している。特にコンピューターを使って3次元で図面を描き、複雑な曲面を設計することを得意とする。産学連携にも力を注ぎ、CT画像をもとに骨を石こうで再現する技術を2008(平成20)年に開発するなど医療分野にも進出した。同社の技術や今後の展望について坂本喜晴代表(60)に話を聞いた。
――研究所を始めたきっかけは
「大学では機械工学を専攻し、25歳のときに金型設計を専門とする『坂本設計事務所』を創業した。一番やりたい設計に従事し続けるには、就職するより自ら会社を立ち上げた方がいいと考えたからだ。05年には、技術発展や産業振興を目的に研究施設などが集まる津田サイエンスヒルズ(大阪府枚方市)に移転し、同時に現在の社名に変更した」
――移転を機に変わったことは
「オフィスのスペースに余裕ができたため、06年に『発泡加工機』を導入した。部材の発泡スチロールをコンピューターで指示した通りに削り出す機械で、さまざまなモデル部品が製作できるようになった。顧客に部品の形を実際に見てもらいながら説明することが可能となり、より説得力が増した。社会との関わりも少しずつ変わってきた。大阪府との関係ができ、その紹介で講演などをする機会や、大学や他の企業との連携も増えた」
――連携による成果は
「関西医科大学(大阪府枚方市)や大阪工業大学(大阪市旭区)と共同で医療分野に乗り出したことだ。当社の3次元形状の加工技術を用いて、CTでスキャンした骨をそのまま石こうで再現する技術を08年に開発した。これを使用すれば、医師が患部の状態をより分かりやすく患者に説明できる。大学は医学などの専門分野に長けているが、機械の使用やメンテナンスに関しては我々中小企業が得意とするもので、互いの長所を生かし合える。人間の骨のモデルは複雑な曲面のため、当社のノウハウが最大限に生きた」
――今後の展望は
「金型技術で培った、複雑な形状の設計や加工の技術を医療分野以外にも応用していきたい。テーマパークや地域のキャラクターをかたどった商品開発や食品加工など、分野にとらわれることなく当社の技術を生かし、地域や世の中に貢献していければと考えている」
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