NPO法人ディーセント・ワーク(大阪市西区)は「みんなが働きがいを持てる社会」の実現をめざし、2012年4月に設立された。アンケートを通じて中小企業の労働環境改善に貢献するサービス「企業の健康診断」を提供している。「『人間らしい仕事』を追求したい」と語る菅沼周平理事長に、掲げる使命や今後の展望について聞いた。
――「企業の健康診断」とは
「依頼を受けた企業の社員にアンケートを行うことで『理想と現実』『社長と社員』『自社と同業他社』の3つの関係におけるギャップを明らかにするサービスだ。質問項目はどれも“直球”で、社員の本音を引き出す狙いがある。ワークライフバランスや給与など10項目の優先順位を問う質問や、『社長は尊敬できるか』『意見を気兼ねなく社長に発言できるか』など、社長の人柄に言及する質問もある。同業他社との診断結果の比較も可能だ。12年11月から提供を始め、今までに20社以上で導入された」
――サービスの反響とアフターサポートについて
「導入した企業の社長からは、『発言をためらっていた社員が意外に多いなど、さまざまな問題が浮き彫りになった』などの感想をもらったほか『予想していた通りだった』といった声も少なくない。(サービスを通じ)多くの企業が社員と向き合えているのだと感じる」
「診断結果の通知とともに改善提案も行うことで、現状把握と問題解決のサイクル『PDCAサイクル』の運用を手助けする。診断結果の良好な企業の情報は、学生団体と企業が共同で制作しているリクルートマガジン『Sense(センス)』に掲載し、採用活動におけるミスマッチの解消に貢献している」
――設立の経緯は
「最初の職場は大手住宅会社で、仕事自体へのやりがいは強く感じていたが、労働環境の悪さやパワーハラスメント、そして自分の若さゆえの甘さもあり、転職を決意。転職先の人材会社では、大企業も含めた約200社を客観的に見る機会を得たが、自分も働きたいと思える企業はほとんどなかった。問題の解決に向かおうとしない企業の多さに失望しかけていた。しかし90年以降、社会の問題を主体的に捉えて解決しようとする起業家たちとの出会いが増え、目を輝かせて活動している様子や、社員を大事にする企業の存在を知った。生き生きと働ける企業を増やして世の中に発信したいと思い、NPO法人を設立した」
――法人名の由来は
「ILO(国際労働機関)が1999年に掲げたスローガン『ディーセント・ワーク』だ。『働きがいのある人間らしい仕事』を意味する。ILOの役員の一人が大阪市中央区に講演に来た際、法人名での使用許可を得た。働きがいを感じる条件は人それぞれだ。例えば、私の場合は誰かから『ありがとう』と言ってもらえることが条件だ。以前はその『誰か』は顧客や上司だったが、今では社会全体に広がり、社会の抱える問題を解決していくことにやりがいを感じている」
――今後のビジョンは
「当法人は2つの使命を掲げており、これまではうち1つの『働きがいの持てる労働環境づくり』に力を注いできた。これからはもう1つの『夢や目標を持てる仕組みづくり』に着手したい。社会的な目的意識を持って社員を大事にしている企業と学生とが関わる機会をつくる。企業の情熱や秘めた思いを知ってもらい、学生が夢や目標を持つきっかけになればと考えている。多くの人や企業と出会って得た経験と知識を、サービスの提供やセミナーの開催を通じて中小企業の経営者と学生に還元していきたい」
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