2002年に設立されたNPO法人アミティエ・スポーツクラブ(神戸市東灘区)は、サッカーや野球、フットサルなどのスポーツスクールを近畿圏の300カ所で運営している。約6000人の会員のうち、9割が中学生以下の子供だ。「スポーツを心から楽しみ、人間として成長してほしい」と語る赤尾修理事長に、設立の経緯や指導方針を聞いた。
――スクールの特徴や実績は
「会員のほとんどが子供で、幼児から小学生が主だが、未就学児や中学生も在籍している。全体の約1割が女子会員で、女子限定の『なでしこクラス』もある。各スクールは地域の公園や体育館、民間コート、学校のグラウンド、幼稚園の園庭などを借りて週に1度練習しており、関西サッカーリーグでの優勝経験者などが指導している。2013年にサッカーチームのひとつが滋賀県の県大会で優勝し、全国大会に出場した」
――設立の経緯は
「幼いころからスポーツが好きでサッカーや野球に打ち込んできたが、プロとして生きていくことはできないと考えていた。それでもスポーツに関わる仕事がしたいと思い、高校卒業後、専門学校を経て学習塾を運営する会社に入社し、新規のサッカースクール事業に7年間携わった。次第に自分のクラブを持ちたいと思うようになり、退社後間もなく法人を立ち上げた」
――指導方針は
「『褒めて伸ばす』ことを重視している。子供にはスポーツを心から楽しみ、長く続けてもらいたい。そのため、叱ることはあっても罵声を浴びせることはしない。引っ込み思案だったが、たくさん褒められたことで自信をつけ、学校のクラス会などで堂々と発表できるようになった子供もいる。保護者からは『すてきな出会いに恵まれて小学生時代を過ごせるのは幸せ』との感想を得ている」
「スポーツマンシップは日常生活でも大いに生きてくる。ルールを守り、相手を尊重し、努力のできる子供になってほしい。会費をもらっている以上、技術指導にも力を入れているが、多くの子供はプロになるわけではない。スポーツを離れても体に染み付いたまま残るような、社会で生きていくための力を獲得してほしい」
――理事長のポリシーは
「組織を永続させることだ。スポンサーありきの運営では、スポンサー企業の業績次第で消滅してしまうこともある。自立した運営を行い、指導の質やマーケティング力を高めていきたい。もしクラブがなくなれば、子供たちはもちろん、応援してくれている人たちも帰る場所を失うことになる。1999年に横浜マリノスに吸収合併された横浜フリューゲルスが、最後に出場した天皇杯での試合を見て実感した。全国優勝を目前にしながら、選手にもサポーターにも悲愴(ひそう)感が漂っていた。クラブを永続させ、子供たちが大きくなってから久しぶりに練習を見に来たときなどに、迎えられる場所であり続けたい」
――今後の展望は
「設立当初から抱き続けてきた目標がある。海外にスクールをつくることだ。まずアジアに進出し、いずれは他の地域に展開していく。指導の質が保てるようであれば競技の幅を広げ、より多くの子供にスポーツの楽しさを伝えられるようにしたい」
「子供に『早く大人になりたい』と思ってもらうことも課題だ。日々仕事を楽しみ、子供を楽しませているうちに『アミティエで先生をやりたい』と言ってくれた子供がいた。将来に希望を持たせてあげられるような大人でありたい」
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