「スペシャルティコーヒー」と称した品質の高いコーヒーを扱うアルタレーナ(兵庫県芦屋市)は、自家焙煎店やイタリアンバールを経営する。「より多くの人にコーヒーの味わい深さを伝え、ゆくゆくはそのおいしさを『スペシャル』ではなく当たり前に感じてもらいたい」と話す八木俊匡代表に、コーヒーに対するこだわりや今後の展望を聞いた。
――「スペシャルティコーヒー」とは
「一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会が普及を進める称号で『豆の生産から抽出まで適正に行われ、消費者がおいしいと満足するコーヒー』を指す。当社ではその評価にさらなる客観性を加えるため、最高品質のコーヒーにのみ与えられる国際的な称号『Cup(カップ)of(オブ)Excellence(エクセレンス)』の審査基準をもとにしている。その基準は香りや甘味、後味など8項目で点数化されており、100点中80点以上を得点したコーヒーを当社ではスペシャルティコーヒーとして扱っている」
――なぜコーヒーの事業を
「高校卒業後プロゴルファーを目指したが、断念してフリーターになった。母親が喫茶店を経営していたこともあり次第にコーヒーを扱う仕事がしたいと思うようになり、日本人バリスタの先駆者が勤める会社に入社し、一から勉強した。同じ方法、同じ豆を使っても、技術によって味が変わるコーヒーの奥深さにのめり込み、2005年に創業した。自分の納得するコーヒーの味を伝えるため、09年に生産背景の分かる豆を仕入れて販売する自家焙煎店『TORREFAZIONE(トレファツィオーネ)RIO(リオ)』の経営と、バリスタとして販売店への抽出技法の教育を始めた」
――仕入れでのこだわりは
「適正な価格で輸入する『フェアトレード』を徹底している。全国から集まった12のコーヒー店で04年に結成したグループ『JAPAN COFFEE COOP』のメンバー数人とともに、年に数回ブラジルやルワンダなど世界中の産地に行き、コーヒー豆の品質を審査した上で農家と値段を交渉する」 「コーヒー豆は基本的に年に1回の収穫で、質の高い希少な豆はバイヤー間で奪い合いの状況だ。生産地の労働や環境の問題にも目を向けることで現地との信頼関係を築いてきた。グループでは焙煎や抽出などのさらなる技術向上のため、2カ月に1度勉強会を開いている」
――フェアトレードについて
「フェアトレードを銘打った商品は数多くあるが、なかにはあまり品質を重視していないケースもある。消費者の購買意欲を高められなければ、継続的な支援にはつながらない。フェアトレードをより社会に浸透させるためにも、新しい基準によって高い品質を保証できる、生産者だけでなく消費者にもフェアな支援の仕組みが必要と考える。消費者がおいしいコーヒーを求めることで必然的にフェアトレードが行われる社会が理想だ。そのきっかけになるようなコーヒーを提供していきたい」
――今後の展望を
「日本でより多くの人にスペシャルティコーヒーを知ってもらい、日常のなかで楽しんでもらいたい。ヨーロッパでは中世から、コミュニケーションやビジネスの場でコーヒーがたしなまれてきた。おいしいコーヒーには持続可能な支援を確立させたり、発想を豊かにしたりする力がある。単なる嗜好(しこう)品にとどまらないコーヒーの価値を今後も新たに発見し、コーヒーの魅力を伝えられるようなイベントの開催や参加を積極的に行っていきたい」
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