2015.10.19 23:15

「クレフ」森田大輔社長に聞く

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記者:板谷祥奈

2003年の設立以来、ウェブデザインを手がけるクレフ(大阪市中央区)は、2日から「AiD(エイド)」と呼ぶ独自のマーケティング戦略を本格的にスタートさせた。この手法により、顧客は事業の原点を再発見し、明確な未来像に基づくウェブ戦略を立てることが可能となる。「顧客とともにウェブデザインを通して笑顔あふれる未来をデザインしたい」と語る森田大輔社長にAiDの成果と今後の展望を聞いた。笑顔あふれる未来を育むウェブ戦略

 ――職業は「笑顔クリエイター」といっている

 「19歳のとき、嫌っていたはずの厳格な父を病気で亡くしてから、思い出すのは険しい顔ではなく遺影の満面の笑顔だと気づき、笑顔には大きな力があると感じた。また親友など身近な人が自殺してしまったとき、どうしたら死なせずに済んだのかを突き詰めたところ、誰もが笑顔で暮らせる社会こそが目指すべき未来だと思った。笑顔づくりを仕事にしたいと考え、名刺の肩書にはクレフの社長ではなく『笑顔クリエイター』と書いている」

 ――AiDとは

 「『AiD(アクティブ・イマジネーション・デザイン)』は、経営理念やビジョンを見つめ直すことから始まる。売り上げが伸びない原因の多くは、『商品を売ることでどのように社会が良くなるのか』という理念が確立できていないために、商品が社会に必要とされていないからだ。最初のミーティングで社長と従業員に集まってもらい、100年後の未来をイメージして企業全体で徹底的に対話をする。事業の目的を再定義し、未来のビジョンから逆算することで本当にやりたいことや、今やるべきことが見えてくる。それらを共有したうえで企業の思いを伝えるマーケティング戦略がAiDだ」

 ――AiD開発の経緯は

 「2012年に約1200万円の広告費をかけ、通販サイトの大きなプロモーションを行ったのが転機となった。通販業界では一般的に広告費の10倍の売り上げが見込めるはずが、たったの50万円しか売り上げがなかった。愕然(がくぜん)としながら考えるなかで、どれだけ格好いいサイトを作ってアクセス数を伸ばしても、エンドユーザーに商品の良さが伝わらなければ買ってもらえないことに気付いた。顧客を笑顔にするために成果にこだわり続け、昨年ようやくAiDという答えにたどり着いた」

 ――導入後の変化は

 「顧客には、使命感を持って事業ができるようになったと言ってもらえている。例えば造花を扱う花屋では、より多く売るために苦労して単価を安く抑えてきたが、本当にやりたかったのは自然と共存する生活スタイルを広めることだと気づいた。その理念をサイトだけでなく商品自体にも反映させたところ、付加価値がユーザーに認められて価格競争に飲み込まれることなく生き生きと商品づくりができるようになった」

 ――きっかけ作りの名人を目指している

 「単にサイトを作るだけで終わらず、顧客の事業同士がコラボレーションするきっかけ作りに取り組み始めた。ある顧客はユズ茶を居酒屋など事業者向けに販売していたが、AiDによって『健康に役立つユズを日常生活の中に取り入れてほしい』と考えるようになり、一般向けの販売にも力を入れ始めた。そこでウェブデザイン事業の枠を超え、当社と関わりのあるスイーツ専門店とユズを使用したコラボ商品を作るプロジェクトを始めた」

 「スイーツを通してユズの魅力が発信され、ユズ茶の売り上げも1カ月で500%増加した。一企業にできることは限られていても、複数の企業がそれぞれの得意分野を生かして組み合わされば新しい可能性が生まれ、笑顔あふれる未来を育みあうことができる」        

学生通信社 大阪大学経済学部 板谷祥奈

2014年6月16日付「フジサンケイビジネスアイ」西日本版掲載

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記者プロフィール

板谷祥奈

板谷祥奈

役職 : -
在学中 : 大阪大学経済学部(1回生)
出身地 : 三重県
誕生日 : 1994年11月8日
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