京都大学大学院工学研究科1年生の杉本悠(すぎもと・はるか)さん(22)はグーグルのサービス「Google Apps」の導入のサポートを中小企業に向けて行うストリートスマート(大阪市)で3月からインターンシップをしている。そこで中小企業相手に「Google Apps」の説明をするセミナーを任せられた。仕事を通して、多くの人と関わりながら仕事をすることの大切さを学び、自分の世界が広がったという。
戦力として期待され発奮
インターンを始めたきっかけは、今までとは別の世界も知りたいと思ったからだ。杉本さんは大学院で自然災害時のハザードマップ(災害時の被害予想や避難場所を示した地図)の研究中心の生活を送ってきた。そこで新たにビジネスの世界も経験したいという理由からインターンシップの説明会に参加。そこで今年設立したばかりの同社に出合った。一から仕事を作り上げていける面に興味を持ち、働くことを決めた。学ぶというより戦力として期待されていると感じ、やる気が出たからだ。
「Google Apps」とはグーグルが提供しているメールやカレンダーといったさまざまな機能のことで、企業などの作業効率を高めるサービスがたくさんある。しかし使い方やより良い活用方法を説明してくれる場所は限られている。杉本さんが任せられている仕事は同社が月3回、中小企業向けに開く「Google Apps」の説明をするセミナーの準備だ。集客や資料の用意、セミナー進行表の作成をしている。
「集団」の強みを学ぶ
セミナーの中身や構成のほとんどを任されていたため、「自分が作り上げていった仕事です」と胸を張る。しかし、活動を通して、一人ではどうしようもない面がたくさんあることを実感したという。セミナーや資料の内容を決める時などは、他の業務の状況も把握しておかなければならない。集客の際にもいろいろな人に助けられたという。「大勢で何かやるより、研究のように1人で取り組む作業の方が好き」と話す杉本さん。しかし、仕事ではいろんな人を巻き込んでいくことが重要だと学び、それを「自分が得た一番のもの」と語った。人と仕事をすることを通じて「人との出会いを大切にしていきたいと思った。今後やりたいことがより具体的になった」と話し、将来はこの経験を活かし、直接人と関わる仕事に就きたいと考えている。
杉本さんは9月末でインターンを終了する。「この半年だけで会社がいろいろと変化し、仕事の仕組みがどんどん出来ていった。その過程に自分が関われてよかった」と振り返る。現在は新たに入ったインターン生への引き継ぎを行っている。「学生時代にひとつやり遂げたものがあるのが重要だと思う。そう思える仕事を与えてもらい、支えてくださった」と同社に感謝していた。同社の松林大輔社長(31)はインターンについて「会社を長く、拡大させながら続けていくためには若い人のアイディアや存在は必要不可欠。今後も若い人が入ってくる流れを維持していくために、受け入れを続けていく」と話した。
〈取材後記〉
ルールを守る、人と連携をとるということを僕はこれまでかなり軽んじていた。結果至上主義で、「終わりよければすべてよしでしょ」という考えを持っていた。しかし、大学4年生になり、ルールに組み込まれ、大勢の中で仕事をする経験が増える中で、その考えに対し「もしかして自分が思っていたことは違うかもしれない」と思えてきた。そしてそういったものは、本当に良い結果を出すために必要不可欠なものだと学生通信社の活動を通して気付く。結果のためには軽んじていたルールや連携が本当に重要だと今は痛感している。みんなルールだから守っていたわけではなかった。杉本さんの「仕事は一人ではできない」という言葉で、その考えがより明確になった気がする。一人でやる仕事とは「素人」の仕事で、複数でやるのが「プロ」なのかもしれない。
以前「プロのスポーツ選手にもコーチが、プロの作家にも編集者と仲間がいる。なのにその分野の素人にも、一人で何かができると思っている人がいる」という話を聞いた。この取材でこの言葉を思い出した。仕事をするということは「プロである」ことだ。今後自分が社会で働いていくためには、一人では無理だと思えた。
(学生通信社 京都学園大学 津村朝光)
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