1937年創業の厚地鉄工(大阪府門真市)は、研削材の噴射によって金属表面を加工し、ペンキ塗装との密着性を高める「ブラスト機」のメーカー。「技術者としての自己満足を追うのではなく、確実にお客さまの満足につなげられる製品をつくりたい」と語る5代目の厚地徹三社長に、ものづくりへのこだわりなどを聞いた。
――ブラスト機とは
「さびをはじめとする不純物が付着した金属表面に、粒状の研削材を吹きつけ、清浄化する機械だ。後で施すペイント塗装の耐力性を高め、剥がれにくくする効果がある。フライパンや炊飯器の釜におけるフッ素樹脂加工の前処理などに加え、さびや塗装を剥がす目的にも使用できるため、船や電車、橋梁(きょうりょう)や鉄塔などのメンテナンスでも活躍している」
――入社当時の会社は
「大学で機械工学を学んだ後に入社し、製造を経て設計に従事した。当時の社員数は40人弱と現在より10人ほど少なく、役職に関わりなく営業に出ることになっていた。お客さまから直に受けられる提案が開発に大きなインスピレーションをもたらし、私も含め社員数人は、思いついた機械を図面なしで製造したこともあった。その経験で、現在でも設計・製造と営業の間に垣根をつくらず、頻繁にコミュニケーションを図って知識や情報を補い合える態勢をとっている」
――開発力も重要だ
「感覚に頼った作業では、同じ精度を維持するのは難しい。工程が広範かつ長時間にわたる場合はなおさらだ。そこで、リモコンによる操作で作業ができるブラスト機『自動大型シリーズ』を開発した。1台で従来の3台分に相当する働きが見込め、接続部から半径100メートルまでの作業に対応する。今後はもう一歩踏み込み、吹きつける研削材の粒子の大きさや、稼働条件などをデータ入力することで、より安定して作業が続けられる機能を加えていきたい」
「『梨地(なしじ)加工』と『ピーニング加工』に対応する機械も製造している。梨地加工とはその名の通り、梨のようにざらざらした表面に仕上げる加工を指し、カメラや携帯電話などの小型電化製品で多く使われる。プレス加工時の金型に細かい凹凸を施すことで、滑らず指紋がつきにくい部品ができる。一方、ピーニング加工は金属にハンマーなどで強い力を加え、疲労強度を上げること。強い噴射力を持つ当社の製品を用いることで、より精度の高い加工を実現できる」
――事業を進めるにあたって大事なことは
「リピーターの存在だ。当社の製品は買い替えまでの期間が20年以上と長い上、頻繁な営業はしていないにもかかわらず、お客さまに『いい機械をありがとう』と再度購入してもらったときには、大きな喜びを感じた。設計者は基本的に一人で機械を設計するため、成果の満足感については独り善がりになることもある。しかし、リピートという目に見える証しによって、一生懸命やってきたことが認められたのを感じた」
――今後の展望は
「これまでは広告に比重を置いてきたが、今後は営業にも力を入れる。過去に当社の製品を気に入ってくれているのに、当社の名前をちゃんと知らないお客さまがいた。もっと接点を持ち、要望を積極的に取り入れ、製品の改良を繰り返していく。70年以上の歴史のなかで培ってきた技術や知識を生かし、社会に貢献できる新しい価値を提供し続けたい」
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