1900(明治32)年創業のヨシモリ(大阪市此花区)は、化粧品のパッケージや飲料品のラベルなどで使用される「特殊紙」を製造販売する。4年前には、顧客へ自社製品への理解を深めてもらおうと、デザイナーと共同で紙の『サンプル帳』をつくった。創業から現在まで、114年。吉森正浩社長(47)に、過去に取り組んだ事業や現在の試みについて聞いた。
デザイナーと協力 金属箔紙の活用へ
――現在扱っている製品は
「紙にアルミホイルやアルミ蒸着フィルムを貼合した『印刷用金銀ホイル紙』と、シールとして使用できるよう粘着加工を施した『金銀ホイル粘着紙』の2つだ。前者はチョコレート菓子や化粧品のパッケージなどに、後者は栄養ドリンク剤のラベルによく使われる。当社は加工紙の製造販売に特化している」
――製造工程で注力していることは
「単に紙とアルミを貼り合わせただけでは金属部分がインクをはじくため印刷できない。また、金属部分を空気に触れさせたまま放置すると腐食してしまう。そこで、発色性に優れ金属を空気に触れさせない特殊なコートを表面に施すことで、腐食を防ぐとともに、インクがしっかりと表面に付着するようになる。この工程は、接着加工後直ちに行わなければならないため、最も神経を使うポイントだ」
――デザイナーとの協力について
「グラフィックデザイナー、北川一成(きたがわ・いっせい)さんに依頼して2010年 に紙の『サンプル帳』をつくった。この『サンプル帳』は当社が加工可能な全種類の実際の紙をまとめてとじてあり、顧客に自社製品への理解と、注文する前のできあがりのイメージを深めてもらいやすくなった。以前は数種類のサンプル帳を必要に応じて使い分けており、サンプル帳の種類ごとに大きさも不揃いであったが『ヨシモリが製造できる全ての製品を見てもらえるようにつくったらいいのでは?』と北川さんからアドバイスを受けたことで生まれた。実際に、手に取りながら見てもらえることでさまざまな提案もしやすくなった」
――新しい試みと今後の展望は
「端材を利用した商品づくりを進めている。生活雑貨や文具、菓子箱などのデザインを手掛ける友人のデザイナー、中島真範(なかしま・まさのり)さんに、さまざまな立体模型を試作してもらっている。現在は、毎週2人で私の部屋に集まり試作品を手に取りながら、小さな子供でも扱えるよう、どのように角を丸くしたりちぎりやすいようにしたりできるか試行錯誤している。ゆくゆくは知育玩具としての活用を考えている。 今後も、地道に今までの紙の商いを手堅く続けながら、デザイナーと共に新たな分野に飛び込んでいきたい」
(学生通信社 立命館大学情報理工学部 吉田怜奈)
2014年6月2日付「フジサンケイビジネスアイ」西日本版掲載(一部内容・表現が異なります)
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