近年プロボノが注目されている。社会人が自分の技能を生かして行う社会貢献活動のことだ。NPO支援もその一つだが、求められるニーズに合わないケースも多い。そこで、このミスマッチを解消する取り組みを進めているのが、2009年5月に設立した特定非営利活動法人サービスグラントだ。関西事務局(大阪市西区)事務局長の岡本祥公子(さよこ)さん(31)に話を聞いた。(オルタナS関西支局特派員=井上直紀)――プロボノとは何でしょうか。
岡本:プロボノはラテン語で、『公共善のために』を意味します。つまり、個人の職業上のスキルを社会に還元するボランティア活動です。日本では弁護士や経営コンサルティング業の中での限定的な活動として始まりました。
2010年にラフォーレ原宿(東京都)で初めてプロボノフォーラムが開かれたのがきっかけで、翌年からメディアに取り上げられるようになり一般の人に広まりましたね。今まで100件以上のプロジェクトが立ち上がり、成果を出してきました。
――なぜプロボノが必要なのでしょうか。
岡本:多くのNPOは資金繰りや人材不足に苦労し、活動の理解を広げるためのウェブサイトやパンフレットの作成、運営の効率化を十分に行えていないのが実情です。
もちろん、個人でプロボノに関わることは可能ですが、NPOの求めているニーズに合わなかったり、NPO側も支援を受ける整備ができていなかったりする場合が多いです。このミスマッチを解消しようとする取り組みをサービスグラントが行っています。
――具体的にどういうことをしているのですか。
岡本:プロボノ希望者は事前にウェブサイトで登録を行います。社会貢献や広いネットワークづくりのために参加する人が多く、例えばウェブデザイナー、メーカー勤め、地方公務員などさまざまな職種の人が集まります。
その中から4~6人のチームを作り、プロジェクトを進めていきます。依頼があったNPOからどのような支援が必要かをヒアリングし、最終的にはウェブページやパンフレットなど、求められた成果物を提供します。
NPOは自分たちの活動を第3者の目線で客観的に見てもらえることにも、大きなメリットを感じているといいます。実際に、依頼を受けた団体のうち97%が満足しているのです。
――参加者のメリットは何でしょうか。
岡本:プロボノのメリットはNPO側だけでなく、参加した個人も得られるものが多いことです。チームメートは異業種で構成されるので、お互いの業界内の話を聞けることや、プロジェクトの進め方や言葉の使い方に新たな発見があるといいます。
チームとして支援を行うことで、行き詰まった時に助け合うことを実感できるのも大きなメリットです。また、仕事との両立をしていくなかで、時間にメリハリができたという参加者もいます。
活動に参加している家電製造業者は『仕事ではエンドユーザーの顔が見えないが、プロボノでは実際に相手の顔を見て進めることができる』と話します。
――サービスグラントの歴史について教えてください。
岡本:サービスグラントは、2005年1月に活動を開始し、2009年5月にNPO法人化した団体です。設立当初は主に東京で活動を行っていましたが、2011年4月に東京以外で初めて大阪に事務所を置きました。
プロボノをより広くに展開するためです。しかし、関西では、東京に比べて登録している人、動いているプロジェクトが少なく、まだまだ認知度も低いですね。
――これからの展望を教えてください。
岡本:多くの人がより良い社会に向けた取り組みを行えば、みんなのためになり、自分のためにもなり、将来の子どもたちのためにもなります。
プロボノはまだまだ認知度が低いですが、より良い社会に関わる現実的で効果的な選択肢として広げていきたいです。関西事務局としてはプロボノの参加者を増やすために、さまざまな場所で説明会を開くなどして認知度を上げるように努力していきたいです。
〈取材後記〉
取材を通して、岡本さんの性格がとても元気で明るいと感じ、最後にそのルーツについて聞いてみました。「プロボノに参加する人は前向きで明るく、支援を受けるNPOも社会に向けて前向きな活動をしている。そのような人と、ずっと接しているので私も明るく前向きなだけ」と少し照れて話された。
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