2013.04.03 12:36

「中島大祥堂」中島慎介社長に聞く

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記者:高梨秀之

半生菓子製造の中島大祥堂(大阪府八尾市)は、これまで卸販売や大手百貨店ブランドなどのOEMをメーンに手掛けてきた。昨年11月1日に創業100周年を迎えたのを機に、さらなる成長のため独自のブランドを発信し、伝統を守りながら時代のニーズへの対応を追求している。中島慎介社長に菓子製造にかける思いや今後の展望を聞いた。――経営理念やビジョンは

 「品質目標に『一番大切な人に食べてもらうお菓子づくり』を掲げ、家族や友人、恋人を思い浮かべながら心を込めて製造するよう社員を指導している。食文化の変遷に対応し、伝統菓子に新たなアレンジを加えることも重要なミッションだ。感謝や利他の心、チャレンジ精神を常に持ち続ける会社風土を追求している。これらの理念やビジョンを名刺大に折りたたんだ1枚のカードにまとめ、社員一人一人に持たせ、内容を朝礼で唱和して確実な共有を図っている」

 ――品質管理へのこだわりは

 「製造工程での不適合品の発生を防ぐため、継続的に監視と記録を行う衛生管理手法『HACCP』を導入している。2010年4月に竣工(しゅんこう)した大阪新本社工場は、その高度化基準の認定を受けた」

 「乳化や粘度の高い菓子の製造における工夫として、真空化できる化粧品用の釜を利用し、空気の混入を防いでいる。衛生管理のために徹底しているのは、デザートラインのドライ化だ。清掃の際、砂糖や生クリームが水分を含んでしまうと、微生物が増殖しやすくなり食中毒のリスクが高まる。そのため独自の施設を導入して排水に至る流れを限定化し、作業場から湿気を取り除いている」

 ――現在注力していることは

 「創業100周年を機に、社名を冠した『中島大祥堂』ブランドを立ち上げた。『日本人に合う味覚の創造』をコンセプトに開発した商品をインターネットで直接販売し、手軽に手に取り、親しみを持って味わってもらえるよう展開している。スイス発祥の菓子で、キャラメルで煮たクルミを生地で包んで焼いたエンガディナーをベースにした『豆果(まめか)』は、国産黒豆の丹波黒を盛り込んだ柔らかいキャラメルをサブレ生地で挟んだ商品で、一時的に生産が追いつかなくなるほど好評を得ている」

 ――社会的な取り組みは

 「日本は食の安全への意識が世界的に見ても際立って高く、製造から賞味期限までの期間の3分の2が過ぎると、たとえあと2カ月持つ食品でも出荷できなくなる。そうした通常は廃棄されてしまうがまだ食べられる菓子は、少しでも多くの食料と心の安らぎを求める人々に積極的に寄付している。東日本大震災発生時には、認定NPO法人フードバンク関西(兵庫県芦屋市)に菓子を寄付し、11年3月19日に181ケースが救援物資として被災地に搬送された」

 ――今後の展望は

 「4月19日から5月12日まで広島市で開催される『ひろしま菓子博2013』に出展する。全国から集まった菓子が展示販売されるこのイベントで、兵庫・丹波市や大阪総合デザイン専門学校(大阪市北区)の協力を受けた産官学共同商品を発表する予定だ。これは丹波市の魅力の発信も兼ねており、学生たちには商品の企画を依頼した。和菓子や洋菓子といった枠組みにとらわれない、見た目にも華やかで斬新なアイデアが200近く揃い、その中から1点を選んで出展する。そこで得たヒントも活用して『中島大祥堂』ブランドをさらに成長させ、家族が楽しく食卓を囲むきっかけになるような、新しく、安全で、おいしい菓子を今後も提供していく」

※「フジサンケイ ビジネスアイ」2013.3.4(西日本版)掲載

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記者プロフィール

高梨秀之

高梨秀之

役職 : 報道部リーダー
在学中 : 近畿大学経営学部(3回生)
出身地 : -
誕生日 : 1989年9月12日
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