「はいていることを忘れるほどのはき心地を」。2008年、奈良県の3社が、ボクサーパンツを中心とする下着ブランド「Growth Panfree(グロースパンフリー)」を立ち上げた。繊維製品を製造販売するラック産業(奈良県磯城郡)、絞り染めや後染めを手掛けるディーシーアイ=同県御所市=、ワッペン作成などを行う原田刺繍(ししゅう)=同県香芝市=で、それぞれの技術を生かした製品づくりを進めている。
最大の特徴は「オールウェイソフトストレッチ」と呼ばれる全方向への高い伸縮性を持つ生地を使っていることだ。特にタオル地と同様の「パイル織り」の製品では縦や横、斜めに一般の3倍近く伸びる。体形に合わせるように優しく縮み、締め付けもないため全ての製品がフリーサイズ。ストレスなく着用できる下着をめざし、ウエスト部分のゴムや刺?の裏側が肌に触れないつくりにしているほか、染色には洗濯しても落ちない独自の染料を用いている。
「オールウェイソフトストレッチは当社の歴史そのもの」とラック産業の吉川友嗣代表は語る。1966年の設立後間もなく、同生地の研究に着手し、素材と編み方に徹底的にこだわり、高い伸縮性を実現した。その性質に目を付けたディーシーアイの飯田亘代表が「染色と刺繍でファッション性を付与した製品ができないか」と、原田刺繍の原田剛広専務を交えて吉川さんに提案したことをきっかけに、共同での開発が始まった。
当初はパンツだけでなく、Tシャツやスカートなども開発。2008年に東京都江東区で行われたファッション・ビジネス総合展示会「JFW―IFF」に出展した。
しかし、コンセプトの不明瞭さから反響がほとんど得られなかったため、素材の良さを肌で感じ取りやすいパンツに特化することに。「あらゆる意味で全方向に伸び伸びと成長しよう」という思いを込めた「Growth Panfree」をブランド名として掲げた。
ギフト用を想定し、贈った側にも贈られた側にも楽しんでもらえるようにと、デザインにも注力。生地を絞ることでさまざまな色に染められるタイダイ染めの特徴を生かしたカラフルな柄や、ジーンズを模した柄などを、メンズとレディースそれぞれで用意した。
「ディーシーアイは1949年の設立から奈良県で染色業に携わってきた。3社の技術を駆使した『メイドイン奈良』を広めたい」と飯田さん。伸縮性を損なわない刺繍には、原田刺繍が72年の創業以来培ってきた技術が発揮されている。百貨店や専門店への卸を中心に、ネットでの販売も展開中だ。
目下の目標とするのは、2014年2月にラスベガスで開催される世界最大規模のブランド展示会「MAGIC」への参加だ。
「各国から集まるバイヤーにアピールし、世界に羽ばたきたい。その発信が、奈良県の産業を知ってもらうきっかけになれば」と原田さんは話す。どれほど規模が大きくなったとしても、地域の活性は変わらないテーマだという。
今後、要望が多ければキッズやマタニティーに向けた製品を開発し、バリエーションを広げる予定だ。「自然なはき心地と鮮やかなデザインを追求し、楽しさと喜びを届けたい」という共通の思いを胸に、3人は挑戦を続けていく。
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