工業製品やウェブサイトなどのデザインを手掛けるモート商品デザイン(大阪市西区)は、2008年にオリジナルブランド「moca(モカ)」を発表した。このブランドのもと、日常で自転車を用いる際に便利なバッグやレザーウォレットなどを企画、市場に提供している。「『自転車は生活の一部』と実感できるような製品をつくりたい」と語る正田勝之代表のデザイナーとしての原点に迫った。
――「moca」について
「『自転車を用いた生活の中で自然に使えるアイテム』をコンセプトに、機能性とデザイン性の両方を追求している。バッグはレザーとコットンの2種類を用意。斜め掛けして走行してもずり落ちにくいつくりになっているほか、内蔵したレザーハンドルによりトートバッグとしても使用できる。そのほか、内部のナイロン製コインケースを取り外して最小限の小銭やカードのみを携帯できるレザーウォレットや、ズボンの裾の汚れを防ぐパンツガードなどを、全国の雑貨店やサイクルショップに卸売りしている」
――素材や部品へのこだわりは
「レザーのなめしには植物に含まれるタンニンを用いており、日焼けや酸化、油分の吸収により色が変わり、使い込むほどに味が出る仕上がりだ。使用している金具の多くは真(しん)鍮(ちゅう)製で、触れるほどに光沢が増す性質を持つ。東大阪市の工場で真鍮がレーザーや研磨石で加工される過程を写したムービーも作成。動画投稿サイトのYouTube(ユー・チューブ)で公開し、職人の技術やこだわりを伝えている」
――会社設立とブランド発足の背景は
「デザイナーとしての出発点は『絵を描くのが好き』という子供のころからの単純な思いだ。工業高校や専門学校でプロダクトデザインを学ぶうちに、思い描いた色や匂いを具現化できる喜びを知った。好きだったオートバイや自転車の仕事に主に関わった後、大阪市にある工業デザイン事務所に就職し、10年以上勤務。知り合ったデザイナー2人とともに01年に独立し、当社を設立した。現在は東京や高知にも事務所を構え、総勢5人のスタッフで運営している」
「自転車は近年、ファッションの一部として受け入れられつつある。しかし、自転車用アイテムといえば防水性や機能性のみを重視することが多く、通勤スタイルや普段着と違和感なく合わせられる商品はほとんどなかった。『それなら自分たちでつくろう』と、08年にmocaを発表。20年以上付き合いのある自転車業界から得た知識を生かせることも発足の理由のひとつだ」
――製造ルートを確保するまでの苦労は
「上質な素材や部品をつくっていながらホームページを持たない職人は多いため、探すのが一苦労だった。そこでデザイン業を通じて知り合った人たちから紹介を受け、バッグ工場や生地の商社に協力を依頼したが、ロットや品質の管理について食い違いが生じた。現在、レザーは兵庫県たつの市にある工場から仕入れており、独立していて志のある若いバッグ職人とともに製造を進めている」
――今後の展望を
「中小企業のオリジナル製品の開発を手伝いたい。海外発注の増加により、下町の多くの工場は苦境に立たされている。ネットを使ってオリジナル製品を発信しているケースも目につくが、それだけでは販路の確保は難しい。多様な工業製品それぞれの持ち味が顧客にしっかり伝わるまでをプランニングし、職人たちが活路を見いだすきっかけをつくりたい。形を描くだけでなく、商品の在り方までを創造するのがデザインという仕事だと考えている」
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