2012.12.17 14:45

遠野まごころネット・「今年のクリスマスは100人のサンタが復興地へ!」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

記者:別宮薫

「東日本大震災の被災地に夢のあるクリスマスを」―そんな思いをこめ、NPO法人「遠野まごころネット」(岩手県・遠野市)は昨年から「サンタが100人やってきた!プロジェクト」を始めた。

ボランティアがサンタクロースに扮して被災地でクリスマスプレゼントを配る。今年は12月22日から24日までの3日間、大きな被害を受けた岩手県大槌町や陸前高田市などで行われる。イベントを主催する同法人の関西事務所(大阪市淀川区)の下間都代子さんにボランティアの魅力とイベントにかける思い、被災地の現状について聞いた。――プロジェクトが始まったきっかけを教えてください。

下間:きっかけは、震災直後に陸前高田市の避難所に派遣されたある看護師が書いたブログです。親しくなった6歳の女の子にクリスマスプレゼントに欲しいものを聞くと、『おうちとママがほしい』。

その子は母親を震災で亡くしていた、という内容でした。心に傷を負った子どもたちはもちろん、大人たちも笑顔になれるように被災地でクリスマスを開催しようと考えました。スタッフの中からは不謹慎だとの意見も出ましたが、開催すると現地では大変喜ばれました。


――元々ボランティアに興味はあったのですか。

下間:今まで興味はなく、むしろ偽善的だと思っていました。しかし今回の震災では、とにかく何かをしなければいけないと思ったのです。毎年恒例だった海外旅行の行き先を東北に変更しました。

昨年5月に初めて「遠野まごころネット」のメンバーとして、がれき撤去のボランティアをしました。同団体は、支援物資の運搬や被災者のメンタル・ケアなど様々な復興支援を行っています。

「遠野まごころネット」でのボランティアに関西から参加した人の同窓会に昨年7月に参加したことがきっかけで、現在は関西事務所の中心メンバーとして動いています。

――昨年のイベントで心に残っていることは何ですか。

下間:当日参加はできませんでしたが、クリスマスの準備ですかね。毎年豪華なイルミネーションで地元の人たちの人気を集めていた石屋さんの装飾を手伝いました。石屋さんの奥さんは他人を家に入れることに抵抗があったため、当初はボランティア受入れには消極的でした。

しかし、一緒に作業するうちにすっかり打ち解けることができました。作業の休憩中には『まさか私たちの住んでいるところまで津波は来ないだろう、と娘に軽々しく言ってしまったことを後悔している。幸い娘は無事だったが、一歩間違えばどうなっていたことか』『誰にも言えなかったことを話せて心が軽くなった』と言われたことが印象に残っています。

被災地に行く時は今でも、家を訪ねます。今ではボランティアの枠を超えた、深いつながりができました。

――今年はどんなイベントになりそうですか。

下間:昨年よりも規模を拡大して、釜石市と関西でもイベントを実施します。プレゼントとして現地で購入した500円ぶんのお菓子の詰め合わせを全会場で約2万6千個配る予定です。

イベント資金を集めるために、ホームページで寄付を募り、企業や大学に募金箱も置いています。しかし、目標額には届いていないのが現状。できるだけ多くの人にプレゼントを配りたいのですね。

――復興に向けた今後の課題は何でしょうか。

下間:大きながれきの撤去は、ほぼ終了しました。しかし、建物や施設がまだ十分に整備されていません。特に沿岸部は堤防を今より高くしない限り新しく建物を建てることができず、更地ばかりの状態です。

行政よりもNPOのほうが早く動けることを生かして、まごころネットでは建物や施設の建設を予定しています。例えば津波が来ても安全な高台に保育園、自然を学ぶための宿泊施設を完備した自然学校、グループホームを建設する予定です。

他にも、『番屋』と呼ばれる海産物を売る道の駅を建てるプロジェクトなどもあります。どちらも現地の雇用を確保し、生きがいにつなげ、コミュニティーをつくることを目指しています。

――私たちができることは何でしょうか。

下間:被災地に旅行に行くだけでも立派な支援になります。大切なのは経済復興のために被災地でお金を使うこと。そして個人が震災のことを忘れないこと。何かしようと思っている人は、無理せずにできることをすればいいと思います。もし、一歩踏み込んだ活動をしたいのなら近くのボランティア機関に相談してください。

(取材後記)
下間さんは明るく優しく、時にはユーモアも交えながらボランティアやイベントに関する様々なお話をしてくださいました。
初めての取材で緊張していた私も、途中からは下間さんのお話に引き込まれてしまいました。
私は遠野まごころネットのメンバーとして今年3月にボランティアに参加しましたが、ボランティアから帰ってからは何もしていませんでした。しかし、このままではいけない、と思い続けていました。ボランティアの経験があってもなくても、私と同じような思いを持っている人はたくさんいるのではないでしょうか。
まずは、「できること」を探すことから始めようと思います。

(学生通信社 大阪大学 別宮薫)

ギャラリー

記者プロフィール

別宮薫

別宮薫

役職 : -
在学中 : 大阪大学人間科学部(3回生)
出身地 : -
誕生日 : 1992年10月12日
  • Facebook
  • Blog
  • Twitter

取材記事

ページの先頭へ戻る