2012.09.25 15:23

「緑屋紙工」 薮野浩明社長に聞く

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

記者:橋本翔一朗

緑屋紙工(大阪市平野区)は、設立時から封筒加工一筋にこだわり、今年で設立50周年を迎える。これまでメーカーからの下請けのみを行ってきたが、ここ数年オリジナル商品の製造やネット販売にも力を入れている。薮野浩明社長に、社長就任後の変革の理由や今後の展望について聞いた。 

――社長就任までの経緯は

 「自ら会社を興した父の姿を幼い頃から見ており、いつか会社の社長になりたいと思っていた。大学を卒業してから2年は、コンピューター関連の会社で働き、25歳で緑屋紙工に入社した。その頃はこの会社を継ぐつもりはなく、経営の勉強をして別の会社を立ち上げようと考えていた。転機となったのは、33歳のとき。今は元気だが、父が胃がんになったことが分かり、万が一のことを考え私が社長に就任した。その頃、当社は何年もマイナス決算が続いており、なんとか会社を回さなければと思い、現場にずっと入っていた。朝5時に起き、寝るのが日付の変わった1時。土日も休まない生活が社長に就任してから半年ほど続いた」

 ――社長就任後の変革について

 「就任当時は、すべて下請けの仕事で、それ以外の仕事を取れると思っていなかった。ただ、メーカーに頼りっきりだったから、いつか仕事がなくなるのではないかという不安があった。もともと、コンピューター関連の会社で働いていたこともあり、活路をネットに見いだした。また、オリジナルの商品を販売することで、下請け一辺倒の状態から脱することができるのではと考えた。ちょうどその頃、あいさつ状のネット販売に成功している人に出会った。あいさつ状でできるなら、封筒でもビジネスができると思い、長い試行錯誤を経て、2007年5月に『封筒屋どっとこむ』をオープンした」

 ――同業他社との違いや自社の強みをどう見ているか

 「封筒加工の業界は、全体的に下請け体質の空気がある。自分たちもかつてそうだったように、メーカーから言われたことしかやらないという会社が多い。自分たちでデザインのアイデアを提示する封筒加工の会社は珍しいと思う。印刷会社や広告代理店は、封筒加工のことをよく知らないため、提示するデザインやアイデアは単調であることが多いが、当社がアイデアを伝えていくことで、セロハン加工を施した封筒など今までにない商品を生み出すことができる。自社に工場を持ち、サイトで直接顧客の声を聞くようにしているので、今まで顧客が作りたくても作れなかった封筒のニーズに応えることができる。顧客の何気ない一言から生まれた技術や商品も多い」

 ――大事にしている考えは

 「行動、挑戦、謙虚という3つの言葉を会社の理念にしている。ネット販売も当初、ほとんど売り上げにならなかった。ただ、始める前からできないと諦めるのではなく、できるのではと思い作業を進めることを信条としている。メールの普及により業界としては斜陽産業だが、工夫次第で、当社の売り上げを上げていくことは可能だと思うし、挑戦を続けていきたい。謙虚という理念は、初心を忘れない姿勢を社員にも持ち続けてほしいという気持ちから掲げている」

 ――今後の展望は

 「新しい需要をつくりたい。固定観念を捨てて、斬新なアイデアを世の中に出していきたいという気持ちが強い。大学生をインターンシップで受け入れるなど、若い世代の育成もしていきたい。製造業には3Kと呼ばれるようなイメージがいまだにある。しかし、製造業こそ、若くて新鮮なアイデアが必要だ。会社だけでなく、社会全体を少しでも変えていきたい」

※「フジサンケイ ビジネスアイ」2012.9.24(西日本版)掲載

ギャラリー

記者プロフィール

橋本翔一朗

橋本翔一朗

役職 : 学生通信社代表
卒業 : 関西学院大学商学部
出身地 : 兵庫県姫路市
誕生日 : 1990年11月24日
  • Facebook
  • Blog
  • Twitter

取材記事

ページの先頭へ戻る