森岡WEB企画(大阪市北区)は、企業や個人のウェブサイトの構築、運営などを行う。マジシャンの顔も持つ森岡昇馬社長は「驚きや感動を与える存在であり続けたい」と語る。ユニークなアイデアはどのようにして生まれるのか、その種明かしをするため、これまでの経験や大事にしている考えなどを聞いた。――日本の大学へ進学しなかった
「18歳のときに、中国の北京師範大学に留学した。中国は将来性があるといわれていたし、その姿を自分の目で見たかった。中国語を学びながら、上海で出会った日本人留学生5人と現地在住の日本人を相手にした国際電話の販売代理店を設立した。業績が好調で仕事が忙しくなり、大学を1年半で退学した。だが、ネットの普及により、次第にビジネスが停滞。2000年に日本へ戻り、6人でIT(情報技術)ベンチャーを立ち上げたがうまくいかなかった。出勤してすぐに喫茶店へ行き、漫画を読んで過ごしたこともあった。仕事は面白くないし、自分のことをつまらない人間だと思っていた」
――転機となった出来事は
「ITベンチャーは02年に倒産したが、5人いた仲間の1人とその後3年間にわたり、2人でウェブ会社を運営していた時期があった。その仲間とは考えの違いで、後にたもとを分かつことになるが、ある美容師から制作の依頼を受けて2人で作ったホームページがとても喜んでもらえた。自分たちのできることなら何でもやるつもりだったが、こういうビジネスがあるのかと、その仕事を通じて気づいた。自分の使命は顧客の魅力をウェブで形にすることだと感じ、05年に当社を創業した」
――事業の特徴と大事にしている考えは
「ホームページ制作の相談を受ける際に、顧客と一緒に魅力を探すようにしている。顧客が自分たちの強みに気付いていないことも多い。その際、自分が相手ならどうするかを考えるようにしている。そうすることで、初めて本質を捉えた提案ができるし、そこに価値があると思う。表面的に考えるのではなく、とことん突き詰めるようにしている。また出会った顧客と長くお付き合いをしたいという考えから、月1回『エムタブ』というニュースレターを郵送で届けている。私自身まだ若く、応援してくれる社長が多い。そんな人たちに、元気にやっていることを伝えたい気持ちもある。社員がエムタブの連載コーナーを持ち、4年間1度も休まず発行し続けている」
――仕事をするうえで心がけていることは
「1人で会社を立ち上げたが、現在は5人の従業員がいる。人を使うと表現する経営者も中にはいるが、関係は対等であるべきだと思う。絶対に社長と呼ばせないし、社長だから偉いということはなく、それぞれの役割が違うだけだと考えている。また、仕事は生活の一部だと思うし、プライベートと分けることもない。自分自身、2年半前から経営者によるマジシャンの会に入り、人前でマジックをするようになった。それ以降、物ではなく体験を売ることが大切だと、仕事をする際により深く実感するようになった」
――今後の目標は
「個人のホームページを作ることも多いが、志のある政治家を応援したい。親子間ですら政治の話をしないが、このままだと若者の政治への関心がますます薄れていくと思う。この空気を変えたい。それに加えて、マジックを通して特殊な事情のある子供たちに笑いと感動を届けたい。11年に2度被災地へ赴き、マジックショーを行ったが、関西でもそういった取り組みを行いたいと思う」
※「フジサンケイ ビジネスアイ」2013.2.18(西日本版)掲載
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