シックハウス症候群や化学物質過敏症などで悩む人のために「やさしい住宅」をつくりあげた会社がある。独自の仕入れと工法で化学物質をできるだけ使用しない家づくりをしている「無添加住宅」(兵庫県西宮市)だ。秋田憲司代表にこれまでの取り組みや住宅へのこだわりなどを聞いた。――無添加住宅誕生のきっかけは
笑顔を見せる秋田憲司代表=兵庫県宝塚市にある自社モデルハウス
「14年前、シックハウス症候群のお客さまが来られた。症状を聞き、化学物質をできるだけ使用しない家を作ることを決意した。当初は、米のりで寄せ木を作ることからはじめたので、莫大(ばくだい)な費用と時間がかかった。また、国内にある材料だけでは限界があり、海外を転々とし、ようやく理想の材料に出合った。実際に住宅完成後、お客さまの症状は劇的に回復した。それ以降、今に至るまで化学物質を使わない家づくりにこだわってきた」
――無添加住宅の特色は
「壁材や断熱材などほとんどの建材は自社でまかなう。日本では、約30年という化学合成接着剤の寿命が住宅の寿命になっていることが多い。このため、当社では接着剤に化学のりを使用せず、米のりやにかわを実用化した。誰もが安心して100年住める家を建てたい」
「断熱材に炭化コルクを用い、その上に漆喰(しっくい)を塗るのも独自の発想で、800度の火にも30分間耐えられる。体にやさしいだけでなく、漆喰によって部屋で発生するペットのにおいなどを抑えるなど暮らしやすさにも配慮している。技術的に新しい一方で、日本古来の家づくりから多くのヒントを得ている」
――事業を成功に導いた要因は何か
「10代のころから、生物学や化学が大好きだった。他社が当社の技術をまねできないのは、建築に関する知識はあっても、そういった知識があまりないためだと思う。興味を持ったら、とことん挑戦する性格だ。10代終わりから20代初めにかけて、単身でインドやグアテマラ奥地のジャングルに行き、植物を探しに行った。現地の先住民とともに1週間以上原始的な生活を送ったこともある。その頃得た知識や行動力は、今の仕事でかなり生きている」
――仕事でやりがいを感じるときとは
「病気に苦しんでいた人が、入居されて感動し、安堵(あんど)の表情を浮かべるとき。毎回、この瞬間に立ち会うたび、こちらも喜びを感じる。シックハウス症候群や化学物質過敏症だけでなく、アトピーやぜんそくも無添加住宅で生活して治ったという人も多い。また、全国にある代理店のスタッフが無添加住宅の家の考えに深く共感し、社会に役立ちたいという使命感をもってくれていることもうれしい。別荘でもよく代理店のスタッフが集まり、パーティーを行う。企業と代理店がこれほどまで仲間意識を持っていることは珍しいと思う」
――将来の夢を
「株式上場を目指すこと。また、近いうちに農園をつくりたい。宿泊施設もそこにつくり、無料で泊まってもらうかわりに農業体験をしてもらう。自給自足の生活が私にとっての理想。会社も自給自足にしたい。作った穀物や、飼育したブタなどを農業体験した人や当社の社員に食べてもらう。資本主義ではどうしても、お金をたくさん稼いでものを買うという考えになるが、お金を使わずに生活するという発想をもつべきだと思う。ものを自分たちで作れば、お金がかからないという魅力にもっと気づいてもらいたい。こんな当社の活動や発想を通じて無添加住宅のファンを増やしていきたい」
(学生通信社 関西学院大学・橋本翔一朗)
※「フジサンケイ ビジネスアイ」2012.6.25(西日本版)掲載
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