2012.12.04 13:18

「子どもデザイン教室」代表の和田隆博さんに聞く

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記者:高木つばさ

「子どもデザイン教室」は、親と一緒に暮らすことのできない子どもたちを支援するNPO法人だ。大阪市東住吉区に教室を開設し現在、幼稚園の年少から高校3年生までの子どもたち38人を対象にデザインの指導を行っている。活動に賛同する会員などの寄付や一般の家庭の子どもたちからのレッスン料で運営。「子どもたちが、デザインを通して、自分の人生をデザインできるようになれば」と語る和田隆博代表(51)に子どもたちと向き合う中で大切にしている思いやこれからの展望について話を聞いた。 (学生通信社 武庫川女子大学 高木つばさ)
――子どもデザイン教室を設立したきっかけは

 「22歳で独立し、グラフィックデザイナーとして活動をしていた。42歳の時、大阪市立扇町総合高校に、社会人講師としてデザインを教えに行くことになった。デザインとは物事を計画立てて実行していくことだと思うが、指導を行う中で、生徒たちにはその力が不足していることに気がついた。小・中学生の早い時期にその能力を育成していければと考えた。偶然、近くに児童養護施設があり、彼らが15~20歳の間に、生活能力が不十分のまま退所期を迎え、厳しい社会の中で生きていく現状を知った。少しでも子どもたちの力になれればと思い、教室を設立し、指導を始めた」

 ――活動の内容は

 「基礎学習を土台として絵本づくりやイラスト、アニメーションの制作を行っている。絵本づくりは、子どもたちが頭の中で考えるストーリーを文章化し、それに合った絵を一から描く。完成後は、皆の前で発表を行い、自分の作品を友だちに見てもらう。最終的にはコンピューターを使って絵本の中の登場人物を動かしていく。このプログラムは学力の向上だけでなく、子どもたちがこれからの社会を生きていく中で必要な、自立力や創造力、プレゼン能力やコンピューター技能の育成を目指している」

 ――子どもと向き合う中で大切にしていることは

 「親と一緒に暮らすことのできない子どもは、愛情不足が原因で感情的に不安定になるときがある。そんな時も同情するのではなく、自分がその子どもの親だったらどうするだろうかということを常に考えて行動する。また、子どもたちへの思いはその都度口に出して伝えるようにしている。不安でいっぱいの彼らが、自分の存在を認めてくれていると実感することが大切だと思う」

 ――子どもたちの未来とこれからの「子どもデザイン教室」の活動について

 「子どもたちには、どんな環境でも対応できる持ち運び可能なスキルを持って、社会に出てほしい。人に左右されず、自分で人生をデザインできるようになった子どもたちを見たい。今後は、この活動を若い世代に引き継ぎ、6人までの里子を育てることができる『グループホーム』を設立して子育てに専念しようと考えている。また、子どもたちが描いた作品を商品化し、その収益金を子どもたちの学資資金に充てる『子どもデザインビジネス』の活動に力を入れたい。親と一緒に暮らすことのできない子どもたちへの偏見がなくなって、社会全体で子どもたちをサポートしていく未来を作ることが私たち大人の責任だと思う」

〈取材後記〉
親と一緒に暮らすことができない子どもたちが作る絵本は、主人公が一人ぼっちだったり、無くしたものを探しに行ったりといった作品が多いそうです。取材後、レッスンが行われている様子を見学させていただきました。子どもたちの、絵と真剣に向き合う姿や、思ったことを包み隠さず口に出す姿を見て、こんなに素直でまっすぐな子どもたちの胸の内に、さまざまな痛みや苦しみがあるのかと思うと、切ない気持ちでいっぱいになりました。私たちが、苦しんでいる人に対してできることは決して同情することではありません。最終的にその人が自立できるように、それぞれができる形で支えていくことだと思います。社会全体がそのような姿勢を持つことで、多くの人の可能性が広がっていくと良いなと思います。

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記者プロフィール

高木つばさ

高木つばさ

役職 : -
卒業 : 武庫川女子大学文学部
出身地 : -
誕生日 : 1992年1月25日
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