ココナッツの恵みを日本の消費者に届ける活動を通じて、フィリピンの貧困層支援をしている会社がある。設立9年目を迎えたココウェル(大阪市都島区)だ。フィリピンの人たちが生産したココナッツを、独自の商品開発で化粧品、食料品、雑貨に加工し、輸入販売する。「支援拡大のためにもココナッツ産業の持続的発展に貢献したい」と話す水井裕(ゆう)社長(36)に、起業のきっかけと今後の展望を聞いた。
――ビジネスを通して貧困層支援をしようと思ったきっかけは?
水井:学生の頃から途上国の環境問題に関心を持っていて、大学卒業後、学びを深めるためにフィリピンに留学しました。きっかけは、高校時代の授業で行った模擬サミットです。
生徒が各国の大統領や首相の役を務め、環境問題について話し合った際、フィリピンの大統領役を務めたことで関心を持ちました。フィリピンでは焼却せず放置されたゴミの山から有害物質が発生するスモーキーマウンテンという場所があり、そこで生活する人々に衝撃を受け、貧困層の人たちの支援をしたいと思うようになりました。
そのとき、熱帯地域に位置するフィリピンではたくさん生育しているココナッツが十分に活用されていないことを知り、それを利用した支援ができないかと考えました。
――会社の事業は貧困層の支援とどう結びついているのですか?
水井:JICA(国際協力機構)と連携し、フィリピン国内の貧困地域に赴いてココナッツの商品開発のノウハウを農家に提供することで、果実だけでなく、皮や殻、水分から多種多様な商品が生まれました。
食器やアクセサリー、化粧品といったそれらの商品を直接僕たちが買い上げ、日本で販売することで農家の支援につなげています。支援活動をより充実させるためにもたくさんの人々にココナッツの魅力を伝えることが重要だと思います。
――ココナッツを日本で浸透させるために必要なことは?
水井:元々ココナッツはクッキーやアイスなどのお菓子、食用油、食器洗い洗剤などさまざまな用途があるので、世界的にも高い需要があります。しかし、日本でより浸透させるためには、付加価値を付けて新たな魅力を伝えることが大事だと思います。
現在扱っているオイルやシュガーなどの品質にこだわりながら、今後はその素材の良さを生かした加工食品や化粧品を増やしていきたいと思っています。新たな魅力をお客さまに知ってもらうために今でも環境イベントに出店し、直接ココナッツに触れてもらうことを心掛けています。
――やりがいを感じるのはどんなときですか?
水井:2カ月に1回のペースで支援地域に赴いていますが、バイクや自転車の数が増えているなど、現地の人たちの生活が目に見えて改善しているのを実感したときです。
日本のお客さまに僕たちの商品で喜んでもらい、ココナッツの良さを知ってもらえたときはやりがいを感じます。ココナッツ農家と日本人どちらも幸せになってもらえるWIN=WINの関係を作れることが僕の幸せにもつながっています。
――今後の目標を教えてください。
水井:最終目標はココナッツを通じて地産地消を促進し、フィリピンの人たちが自国の貧困層を支援できる枠組みを作ることです。一方で短期的な目標としては、日本でよりたくさんの人にココナッツの良さを伝えるために、ココナッツ専門のカフェを作りたいと考えています。
ココナッツ製品を味わってもらえる機会を増やし、ココナッツといえばココウェルだと言ってもらえるように頑張ります。
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