新車・中古車の販売と修理、車検を主な事業とする矢野モータース(大阪市・生野区)は、保険販売の代理店としての機能も合わせ持つ。矢野昌宏社長(53)は、交通事故が顧客の人生に与える影響の大きさを実感し、昨年5月からいろんな会社に出向いて自ら講義する「自動車事故削減セミナー」を始めた。手掛ける事業へのこだわりと、セミナーへの思いを聞いた。
――車検へのこだわりは?
矢野
:スピードや価格だけではなく、お客さまの安心と納得を重視しています。不具合がある箇所については画像を用いたオリジナルのカルテで説明し、お客さま自身に修理を行うか否かを決定してもらうことで、無用なトラブルを回避しています。この当社ならではの目に見えるサービスは大阪府自動車整備振興会の機関紙でも取り上げられました。
――セミナーを始めたきっかけは?
矢野
:事故は人生を決定的に狂わせるからです。営業や運輸業は車があってこそですが、保険会社は事故を頻繁に起こす会社との契約を敬遠します。無事故無違反を継続し、保険料を削減して、社員の雇用維持につなげてもらうことが大事だと考えています。だから、ひとりでも多くの人の人生を守りたいという気持ちでセミナーを始めました。今では年に15回から20回のペースで行っています。
――どんな内容ですか?
矢野
:セミナーの最大の目的は受講者の安全運転意識を改革するお手伝いをすることです。過去の事故対応で培ってきた経験をもとに、被害者やその家族の悲しみ、加害者の事故後の悲惨な人生といったリアリティのある話を用いてレクチャーします。
あえて保険会社が言えないような、お客さまのプライベートに関わる内容まで踏み込むこともあります。たとえば『みなさんに失礼なことを言います』と前置きしてから『事故を起こして平然と会社にいれる?』『あなたのせいで会社が保険契約できなかったらどうするの?』『子どもがいるんじゃないの?』といった言葉を意識的に投げ掛け、交通事故が決して他人事ではないことを受講者に理解してもらいます。
――どんな反響がありましたか?
矢野
:ある会社で開いたセミナーでは、半年に3回も事故を起こしたという社員が受講していました。保険販売代理店としての経験から、それ以上事故を起こせばその社員はクビになり、会社は保険の加入を断られる可能性があることを、伝えました。
しばらくしてその社員と出会い『安全運転推進委員』という役職に会社から任命されたことを知りました。これまでの活動に確かに意味があったことを実感し、思わず涙がこぼれました。
――今後の展望は?
矢野
:学生時代に免許を取得し、ペーパードライバーのまま社会に出た人の多くは、実際に事故にあうまで、事故後の処理や保険の仕組みについて知らないままです。会社の新入社員の研修に、自動車事故削減セミナーを取り入れてもらいたいと考えています。そのために今後も事故の悲惨さや保険の仕組みを伝え、事故とは無縁のカーライフの提案を続けていきます。
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