昨年11月、未曽有の巨大台風が襲ったフィリピン・レイテ島。山岳部など支援物資が行き届きにくい過疎地域で救援活動を行うため、ココナッツ製品の商品開発と輸入販売を行うココウェル(大阪市都島区)代表の水井裕さん(37)が被災地を訪れた。強奪など治安の悪化が懸念される中一人で飛び込み、救援物資の搬送に尽力。継続的な支援をめざし、なぎ倒されたココナッツの木を処理しつつ商品展開につなげる新たなビジネスプランを提案している。
「Roofless, Homeless but Hopeness(ルーフレス、ホームレス バット ホープネス)」。水井さんが物資を購入するために向かった被災地の看板に掲げられていたメッセージだ。
レイテ島は台風による暴風雨や高波によって多くの家屋や建造物、そして人が流され、壊滅的な状態と伝えられていたが、家族を失った人々も気丈に振る舞っていた。「『屋根や家が無くても希望がある』。この言葉は自助努力の意識を持ったフィリピンの国民性を象徴していた」と水井さんは話す。
水井さんが救援物資を届けたのは、支援が届きにくい貧困地域。被災直後の昨年11月下旬と今年1月中旬の2度の活動で計3300世帯に、6人家族が3、4日生活できるコメ3キロ、肉と魚の缶詰3缶ずつ、粉ミルク、マッチなどを配給した。
被災直後、支援拠点のセブ島には世界中から集まったたくさんの支援物資が山積みにされていたという。「フィリピンで大事なのは、支援を直接届けること」。
日本とは異なり、フィリピンは汚職や腐敗がまん延する政治体質のため、被災者の多くが「助けが来ないのでは」という不安を抱えており、水井さんは「資金や人手に限りがあるため大規模な支援はできないが、被災者の不安を和らげるために直接、現地まで足を運ぶ必要がある」と強調する。
このため被災地に物資を効率的に行き届かせようと、水井さんが支援チームとして協力を求めたのは現地の被災者たちだった。被害の状況やニーズ、地理を誰よりも把握しているからこそ効率的な支援が可能になるからだ。
現地スタッフらの助けを得ながら、輸送用トラックと食料物資を現地で調達。島々をフェリーで経由して、支援の目的地へと向かった。フィリピンに過去40回以上も通い詰めてきた水井さんだからこそできるやり方だ。
ココウェルはココナッツ事業を通じ、フィリピンの貧困層支援を10年続けてきた社会支援企業だ。一商品の販売ごとに3ペソ(約8円)を貧困層支援に当てる「WITH COCO FARMER(ウィズ ココウェルファーマー) プロジェクト」を、被災直後には一商品30ペソに拡大。フィリピン台風支援基金を立ち上げ、募金も集めた。
これらに会社から支出した100万円を加え、計420万円の支援金を準備した。残った支援金は今後、2カ月に1度行う復興活動に充てる予定だという。
ココウェルは今回の被災地支援を新しい事業として発展させる。台風被害でなぎ倒されたココナッツの木は約1500万本とされ、そのまま放置されているのが現状。そこで被害を受けたココナッツ農家からそれらの材木を引き取り、新しい苗と交換する。
引き取った材木は皿やスプーンなどの雑貨に作り替え、日本で販売を始める。水井さんのビジネスプランだ。そして最後にこう付け加えた。「ビジネスができるからこそ、持続可能な支援ができる」。
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