2012.12.17 18:56

バリアフリー向上と障がい者雇用をめざすレストラン開店

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記者:高梨秀之

10月29日にオープンした「和のだんらん緑彩」(大阪市北区)は「誰でも自然に食事を楽しみ、自然に笑顔になれる店」をめざす和食レストランだ。店長の山本昌幸さん(41)は、店内のバリアフリーの向上と障がい者の雇用をすすめていく。

山本さんが「緑彩」の構想を立てたのはオープンの3カ月前。外食食材を専門に扱う株式会社アドム卸販社(大阪市北区)の直売野菜会に参加し、同社代表取締役の岡部義雄さん(45)と出会った。そこで以前から関心のあった障がい者の支援について話し合い、分け隔てなく自然なサービスを提供するレストランの開業を考えた。

 山本さんは当時経営に関しては全くの素人だったものの、長年勤めていた建物管理会社を辞め、新規オープンする緑彩の店長となることを決意。岡部さんは現在そのオーナーを務めている。

 バリアフリーへの第一歩として、ビルの1階にある店舗入口の階段はスロープに改修した。障がい者の雇用も目指し、皿洗いや、酒とソフトドリンクの作成といった業務を任せていく予定だ。その意義として、山本さんが特に重視するのはふたつ。ひとつめは、自活の支援は本人だけでなく、扶養していた家族も安心させられるということ。ふたつめは、労働機会の提供は、新たな才能の発掘を可能にするということだ。

 その意義に確信を与えたのは、障がいを持つ子どもの自活を支援する一般社団法人からふる(埼玉県川口市)だ。10月13日、山本さんと岡部さんは緑彩のイメージキャラクターを考案するため、からふるが月に1度開催するお絵かき会「アトリエからふる」に参加した。アドム卸販社のシンボルのフクロウと、野菜のイラストを子どもたちに描いてもらったところ、一筆書きのフクロウなど、独創的な作品が並んだ。その中でも一際目を引いたのは、赤や紫、黄色といった新鮮な色づかいのフクロウと、数字の組み合わせで描かれたブロッコリーだった。そのふたつのイラストをもとに、イメージキャラクター「ふくべぇ」が誕生した。「そのブロッコリーの作者は数字をデザインする天才だった」と、山本さんは我が子のことのように笑った。

 緑彩は今後、早ければ来年の春頃に2号店をオープンし、さらに3号店以上の展開も視野に入れている。新店ではバリアフリーの向上を目指し、車いすの人でも、健常者と同じ高さの目線で食事ができるよう設計した円卓を導入する。障がい者の雇用も行い、オープンの2カ月前からじっくりと研修を進めていく予定だ。「ひとつの分野でなら才能を発揮できる人は多い。その集中力を料理に向けられる人がいたら、ぜひ調理も任せていきたい」と山本さんは話した。

(取材後記)
「ホエー豚と野菜のしゃぶしゃぶ」と「ヘルシー豆乳鍋」(各3000円)を食べた。ホエー豚とは、チーズ作製過程の排出物ホエーを与えられて育った北海道産の豚で、関西での取り扱いは緑彩が初めてだという。臭みがなく、ふわりと舌先で広がるような甘みが特徴だ。ダシにさっとくぐらせるしゃぶしゃぶは、その甘みがいっそう引き立っていた。ヘルシー豆乳鍋は肉の柔らかさを堪能でき、さらに途中からトマトやカレーを加えていくことで、多彩な味わいが楽しめた。押しつけたり、ごまかしたりするのでなく、素材本来の持ち味を活かす。その姿勢が、雇用を通じて才能を引き出そうという思いにつながっているのだと感じた。

(学生通信社 近畿大学 高梨秀之)

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記者プロフィール

高梨秀之

高梨秀之

役職 : 報道部リーダー
在学中 : 近畿大学経営学部(3回生)
出身地 : -
誕生日 : 1989年9月12日
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