日本各地の梅酒300種類以上、リキュール150種類以上の中から、日本一の梅酒とリキュールを決定する「第7回天満天神梅酒大会」が、2月16日から24日まで大阪天満宮(大阪市北区)で開催される。その実行委員として奔走しているのは、同大会を主催する有限会社上田(大阪市都島区)の、2人のインターンシップ生だ。同志社大学法学部4年生の大江雄仁(おおえ・たかひと)さん(21)は「負荷を受け続ける中で、強い責任感と充実感を覚えるようになった」と語り、阪南大学経営情報学部3年生の坂本圭さん(21)は「自信を持てずにいた日々から一歩踏み出せた」と笑顔を見せる。
梅酒市場と地域の活性化をテーマとする同大会は、1万人以上が来場するイベントだ。200蔵以上の酒蔵が提供する梅酒とリキュールを、700円の入場券1枚で自由に試飲してもらい、投票によって上位10銘柄を選出する。さらに和酒ソムリエなどで構成される最終審査員による採点を経て、日本一の梅酒とリキュールを決定する。さまざまな酒と出合い、それぞれの個性をじっくりと味わえるのが魅力だ。
運営に携わる学生を成長させるのも大きな目的で、当日の試飲会や販売会には学生ボランティアもスタッフとして参加する。大江さんと坂本さんは、その事前研修で指導員を務めるほか、酒蔵への招待状のファクス送信や、登録商品の入念なチェックなど、地道な作業を日々行っている。
大会の運営以外にも、2人は多くの業務を担当している。上田が運営する酒店「酒 高蔵」(大阪市都島区)での販売や、モバイルサイトの管理、1日600本以上に及ぶ酒の出荷作業などだ。そうした上田の7カ月間に及ぶインターンに2人が参加したのは、自分の成長を強く望んだからだ。
インターンを始める前、銀行への就職がすでに決まっていた大江さんは、その仕事の意味を深く理解するために、経営者の視点を学びたいと考えていた。そんなとき、学生のインターンを支援するNPO法人JAE(大阪市北区)から、上田の代表取締役社長上田久雄さん(37)を紹介された。
「負荷を受けてこそ成長できる」「学生には自由に想像力を発揮させ、その結果の責任は社長の自分がとる」という姿勢に感銘を受け、上田社長のもとで学ぶことを決めた。銀行の課題に追われ大会の準備が滞った時期もあったが、期限から逆算して計画し、業務に明確な優先順位をつけることで解決した。「大会を成功させる責任と向き合い続けたから乗り越えられた」と大江さん。酒のネット販売にも意欲を燃やし、モバイルサイトを毎日更新した結果、月間売上の10万円の増加に貢献した時は、大きな喜びを感じたという。
坂本さんは大学の授業で長期インターンの紹介を受け、昨年6月にJAEの合同説明会に参加した。周囲の学生が積極的に上田社長に質問する中、これといった活動経験がなかった坂本さんは自信が持てず、気後れしていた。それに気づいた社長の「今は何も持っていなくても、やればできる。成長できる」という言葉に心打たれ、挑戦を決意した。初めは業務内容のメモもままならなかったが「仕事でのミスは、仕事で取り戻せ」と社長から叱責され、仕事の達成を真摯に目指す姿勢を学んだ。今では倉庫での出荷作業にも慣れ、パートの人たちに定時に帰ってもらえた時、特にやりがいを感じるという。
入場券1枚につき5銘柄に投票できる形式で、前年は梅酒部門は2万2千票、リキュール部門は1万6千票を記録したが、今回はそれを超えるのが目標だ。大会当日のサプライズとして新たなイベントも企画しており、業務の合間を縫って準備を進めている。「常にエネルギッシュであり続け、社内を活性化させる」という期待を背負い、2人は3月中旬まで活動を続けていく。
第7回天満天神梅酒大会HP:http://umesusu.jp/taikai/
<取材後記>
「大会のHPによると、前回は熟成した梅を使った商品が上位にランクインしたそうですが、風味が違うんですか?」。こう大江さんと坂本さんに尋ねると「それもありますが、ベースの酒によって変わるところが大きいです。日本酒か、焼酎か、ウイスキーか。それによって香りが変わってくるんですよ」と教えていただいた。若い青梅を使用する場合でも、漬ける酒の性質によって、色とりどりの趣を見せるという。
社長の価値観に漬かったインターン生の2人は、梅花の見ごろに上田から巣立っていく。そのころどのような風味になっているのか、注目せずにはいられない。
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