2013.01.21 13:49

「シーメック」の橋本吉生社長に聞く

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

記者:服部英美

シーメック(堺市堺区)は切削工具や工作機械を業界向けに販売する。「理念と現実のギャップを埋める努力を日々続けることが経営者として大切」と語る同社の橋本吉生社長に経営理念や今後の目標について聞いた。

――社長就任までの経歴を。今の経営に生かせていることは何か

 「32歳で部品製造会社から転職し、1984年、36歳で先代の義父の跡を継いだ。前職時代は技術職、品質管理、営業を経験した。そこで学んだことは人と人とのつながり方。製造業はいかに品質が高く顧客が満足する製品を作るかが大事だが、製造だけに関わる人に顧客のニーズはわからない。営業も経験したおかげで、製造と営業の相乗効果でよい製品ができるとわかった。顧客の真のニーズは電話やファクス、メールではなく直接会って話すことでわかる。これは私が営業をしていた時代も、現在も未来も変わらない」

 ――経営理念の「お客さまに真に喜ばれるために」の「真に」に込めた思いは

 「社長就任後、経営者が集まる中小企業家同友会で経営理念を持つことの大切さを学んだ。現在の理念の基礎となる思いがはっきりとし、数年後に定めた。『お客さまに真に喜ばれる』ことのとらえ方には幅がある。たとえば安い製品を売ることで顧客に喜んでもらえる。しかし、それだけだと利益が縮小する。顧客のニーズを掘り起こし、それに合う商品を提案する。単一商品ではなくほかの商品と複合的に組み合わせる。価格だけではなく信頼を得ることも付加価値を生む。『真に喜ばれる』とは、このように顧客視点で考えて動くことで実現する」

 ――社員の行動指針「人と人とのつながりを大切に」が生まれた経緯は

 「前職で営業をしていたころ、取引先の人が製品に小さなさびを見つけ、床にたたきつけ、持って帰れと言った。その製品を拾う自分の姿が惨めで、一人の人間として扱われていないという屈辱を感じた。商品を買う立場でそこまでの行為が許されるのかと疑問を持った。社長就任後、同友会で社員や立場の違う人とのかかわり方を学び、『社員と社長、売り手と買い手は、立場こそ違うが人としては対等だ』との思いから『立場に関係なく人と人とのつながりを大切に』という意味を行動指針に込めている」

 ――経営理念を掲げる意義は

 「『理念』は真理であり、社長だけでなく社員全員が納得できることでなければならない。理念だけで会社を経営できるのかと悩むこともあるが、理念を掲げることで、初めて現実との差に気付くことができる。それを検証し、どのように埋めるかを考え行動することが大切だ」

 「理念を社員に浸透させるのに15年ほどかかった。今も社員が同等の思いを持っているわけではないが、その隔たりを否定せず、努力する姿勢を社員に示すことが大事。朝礼時、全社員で唱和しているが、それだけでは浸透しない。さまざまな場面で解説しながら、共有し続けている。方向性を決め、それに沿って社員と会話をすることで、効率よく業務が回り会社のパワーが出てくる」

 ――今後の目標は

 「課題は製造業の海外進出が進んでいることだ。今までは大企業の傘下にいれば仕事が入ってきたが、グローバリズムによってその時代は終わった。地域経済が疲弊している中、そこで人々が生活していくためには、生産活動によって地域経済を豊かにしていく必要がある。それを担う中小企業が生産活動をしやすいコミュニティーを作りたい。行政や大学とも連携し、地域経済に貢献していきたい」

※「フジサンケイ ビジネスアイ」2012.12.3(西日本版)掲載

ギャラリー

記者プロフィール

服部英美

服部英美

役職 : 広報部リーダー
卒業 : 大阪大学文学部
出身地 : 愛知県名古屋市
誕生日 : 1990年7月14日
  • Facebook
  • Blog
  • Twitter

取材記事

ページの先頭へ戻る