小中学生の問題発見力を高めるためのワークショップ「モノコトシンキング」が11月22日、「ラーンネット・グローバルスクール」(神戸市東灘区)の六甲山のびのびロッジで開かれた。株式会社ジーオービー(東京都調布市)が展開する小中学生向けの創造性教育プログラム「Junior Innovation Lab」の一環だ。同スクールに通う小中学生、13人が参加した。
六甲山上にある山荘風の家でワークショップは行われた。「柄が太すぎて使いにくそう」「ほうきの全面が床に当たってない」など参加した生徒は、他の生徒がほうきで床を掃くところを観察し、やりづらそうな点などを探した。
同ワークショップは、給食や運動会など普段なにげなく取り組んでいることを観察し、問題点や解決策を見つける力を身につけることが目的である。デザイナーが製品の設計に用いる「デザイン思考」の、観察する・問題点を見つける・アイデアを考える・試す・評価するという5つのプロセスを応用する。
特に重視するのは「問題点を見つける力」。ビジネスをする上で必要な力であり、習得するには人とは違う視点から問題を見つける必要がある。固定観念が構築され始める前の中学入学前後で触れることが大切だ。この力は、商品が均一化し売れなくなっている中、個々のニーズに合う製品を作り出し、差別化を図るために重要となる。
生徒は、教室や風呂場、屋根の上などを掃除しながら問題点を探した。「ほうきでどれだけ掃いても、端からごみが散らばっちゃう」など、発見した問題点から最も解決したいことを一つ選び、原因と解決策を考えた。
掃除機を使った生徒(10)は「掃除機では隙間のごみが取れない。小さくて長いノズルがないからだと思う」と話し、厚み1cm・長さ80cmぐらいで弾力性があり、暗闇でも使えるように発光ダイオード(LED)のついたノズルを考え、絵を描いて発表した。
同社は社会的課題を解決し、革新を起こす人材を輩出することを目的に、今年5月に設立され、起業を目指す若者の支援などを行っている。
「ラーンネット・グローバルスクール」は、自分で考え行動する力を身につけるため、それぞれの生徒が興味のあるテーマを探求するプロジェクト学習などを取り入れている。双方の目指す教育が合致し、ワークショップを開催するにいたった。
同スクール代表の炭谷俊樹さん(52)は「掃除は普段あまり意識せずに惰性で行ってしまうが、このワークショップは掃除について意識して考えることができると思い、授業に取り入れた。生徒は普段と変わらず自分の意見を伝えていたが、中には結果と原因を混同して考えてしまう子もいた。繰り返し行うことでこの思考法は身につくと思う」と感想を寄せた。
同社で「Junior Innnovation Lab」を企画する経営コンサルタントの西山恵太さん(26)は「デザイン思考は、学校で学ぶ思考法とは異なることを体感してもらうことを目的に開催した。情報を集める方法は知っているが、問題の因果関係や仕組みを知ろうとしない生徒を見て問題意識を持った。詰め込み型の教育は、問題を早く解く力などの習得には役立つが、問題を発見する力は身につかない。まずはこのプログラムを塾や私立学校に導入してもらい、最終的には公立学校で取り入れてもらうことで、学校教育を変えていきたい」と語った。
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