NPO法人(特定非営利活動法人)シニア自然大学校(大阪市中央区)は1994年、自然環境を守ることを目的に大人向けの自然教室を開講した。40~80代まで約2000人の会員が所属し、自然環境問題の普及啓発活動リーダーを数多く輩出している。
大人向け自然教室で指導者育成
「親の世代から引き継いだ豊かな自然を次の世代に伝える必要性を感じていた」。齊藤隆代表理事は発足の動機をこう語る。子供への教育に加え、社会に自然学習を普及させるためには大人のリーダー養成も大切だと考え、2008年からNPO法人としての活動を始めた。
団体名の「シニア」は「高齢者向け」ではなく「上級」という意味を込めており、幅広い年齢層が対象だ。
入学すると最初の1年間、入門講座を通じて自然環境についての知識を蓄える。同講座では貸し会議室などを利用した室内講義や、関西各地での野外実習を受ける。夜間も開講しており、昼間働いている人も受講できるのが特徴だ。
生徒は講座を通して興味や関心がある分野を見つけ、13ある研究科または約70あるサークルの中から自由に選んで活動する。修了年限はないため、生涯にわたって積極的に活動できる。
研究科やサークルにはさまざまな種類がある。植物や野鳥、昆虫などの自然環境が中心だが、今後はさらに伝統的な食べ物を次の世代に伝える食育や、心理セラピーといった社会貢献につながるコース、バードウオッチングやトレッキングなど自らの趣味を深めていくコースなどに広げる予定だ。
同じ目的を持って集まり、経歴とは関係なく活動する。「気軽に会える親しい仲間が増えることで、参加者に新たな生きがいを感じてほしい」と御旅屋(おたや)瑛一副代表理事兼教育部門長は話す。
自然だけでなく、日本の歴史や文学、世界の音楽や絵画などの文化を次世代に伝える活動も実施している。
その一つが大阪府池田市で行っている「炭材植樹活動」だ。茶道で使用される炭材の原料材木、クヌギの苗木を、地域の住民と共同で植えた。この伝統ある特産品を知ってもらうための教室も開催した。「日本の文化は日本の自然の上に成り立っている」という思いを、齊藤代表理事は強く抱いている。
課題は、講座を開くのに会議室を借りなければならないこと。自分たちの教室を持ち、講座の日時など利用者のさまざまなニーズに応えることを当面の目標としている。
「会員からの入会金や受講料があるが、それは講師に謝礼を支払ったり団体内の情報誌を作成したりするのに使われている。一方で、CSR(企業の社会的責任)活動の一環としての、寄付の申し出がある。そうした寄付金で設備を充実させ、事業を継続させたい」と原納公也監事は意気込んでいる。
(学生通信社 大阪大学経済学部 宮武由佳)
2014年5月26日付「フジサンケイビジネスアイ」西日本版掲載
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