1948年創業のエンジニア(大阪市東成区)は、看板商品「ネジザウルス」をはじめ約1000種類の作業工具を、開発からプロモーションまで手掛ける。「ネジザウルス」はペンチ先端の内側に施した縦溝加工と独自の縦溝角度により、従来製品より高い摩擦力を持つ。このため通常は外せないつぶれたねじなども外すことが可能だ。「世界一愛される工具メーカーになる」と語る高崎充弘社長に、ビジョンや目標へのステップを聞いた。
――どんな会社を目指しているか
「単に利益を上げるだけではなく、愛される工具メーカーを目指したい。掲げているビジョンは『クール、イノベーティブ、遊び心』の3つだ。看板商品の『ネジザウルス』は、つぶれたねじやさびたねじでも簡単に外すことのできる実用性と、ネジザウルスという名前の由来でもある恐竜をイメージした愛着のある外見で、当社のビジョンを体現している。2002年に初代のネジザウルスを開発。13年末で累計180万本近く販売したが、リーマン・ショックで売上高が急減した時期もあった」
――経営危機からどう立ち直ったのか
「3代目までのネジザウルスは工場やメンテナンスなどの専門業者向けだったが、『一家に一本ネジザウルス』を合言葉に、どんなねじでも外せるペンチを家庭向けに普及したいと思い『ネジザウルスGT』を開発した。売り上げは急増し、その原因を分析してみると『M(マーケティング)、P(パテント)、D(デザイン)、P(プロモーション)』の4つの要素『MPDP』が重要だと気が付いた。パテントがない商品は他社の権利を侵害するし、デザインに力を入れていない商品は機能が良くても売れにくい。すべての要素が重なったときヒット商品が生まれる」
――売上高の分析からMPDP発見までの背景は
「3代目までのネジザウルス販売で、改良すべき点や不満などが書かれた『愛用者カード』を約1000枚リストアップした。多かった要望では、グリップの改良、先端のスマートさ、ばねを追加、カッター追加という項目があった。わずか7人だが『トラスネジも外しやすく』という意見もあった」
――少数意見も取り入れている
「少人数の意見を迷いながらも取り入れた新製品の営業を行ったところ、最も評判が高かったのはトラスネジを外せることだった。多数の意見は顕在意識であり、少数側の潜在意識に気付くことが半歩先のニーズを読み取ることにつながる」
――自由な社風がある
「中小企業だから一人の思いやアイデアを全員で共有しやすい。毎日の朝礼で部門ごとに職場環境を維持向上するためのスローガンである『5S(整理・整頓・清掃・清潔しつけ)』の活動状況を発表することと、日報で全員にコメントすることは欠かさない。この習慣で全員がどういう状況にいるかが分かりやすい。面談も年に数回、1人30分ずつ行い、目標管理をしている」
「大企業と違い社内に知財部門がないのでパテントの部分で苦労するが、逆に知識をつけるために資格への挑戦も盛んだ。知的財産管理士技能検定は社員30人中9人が取得した。基礎知識が付くことで弁理士との話も進めやすくなった」
――今後の展望を
「道具をさらに進化させたい。人間が進化するなかで、言葉と道具の2つの発明があった。道具は手の延長で、手と一体化するとあらゆる可能性が見えてくる。現在、ネジザウルスの売り上げの95%は国内で、残りが海外だ。ねじで困る人は日本だけに限らない。世界中で受け入れられるよう海外向けブランドも考えている」
「日本では恐竜をモチーフにしたネジザウルスのマスコットキャラ『ウルスくん』でプロモーションを行っているが、国外では吸血鬼をイメージし『ヴァンプライヤーズ』と商品名を変えて展開している。もっと普及することで『世界一愛される工具メーカー』をめざしたい」
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