2001年設立のNPO(特定非営利活動)法人JAE(ジャイー、大阪市北区)は、「未来のために場づくりで人を育む」を理念に、若者が目的を持って社会に出る機会をつくる活動に取り組んでいる。主な事業は、中小企業での6カ月前後を基本とする長期実践型インターンシップ「アントレターン」と、小中高校で企業が仕事体験授業を行う「ドリカムスクール」の2つ。「社会につながる教育の場をつくりたい」と語る坂野(ばんの)充代表理事に事業展開などを聞いた。
――大学時代、将来に不安を持ったと聞く
「大学で馬術部に所属し、就職活動を始めるまで部活のことしか考えていなかった。ただ、社会に出て何か役立つことを学んできたかについて不安な思いもあり、インターンシップを受けようと決意した。そこで始めたのが、若者と政治を結ぶNPO法人ドットジェイピー(東京都千代田区)が運営する議員インターンシップ。議員と行動することで多くの人に出会い、世界が広がった。その経験をもっと深めたいと思い、同インターンシップを運営する学生スタッフとして活動を始めた」
――気づいたことは
「運営する側になると、社会や知らない大人と出会うことで学生が変わることに気づいた。そして、これを人に伝え、学びを循環させたいと思った。学校は社会に出る準備をする場所でもあるが、ただ通うだけでは社会に生かせる学びが少ない。そんなときJAEに出会い、2003年から所属。10年に事務局長になり、13年に代表理事に就任した」
――現在の事業の課題は
「アントレターンは1社と学生を、ドリカムスクールは1社と1校をそれぞれマッチングさせる。その後のフォローまで、数回の面談などで長期間にわたって関わった学生は、自信や具体的な目標を持つなど良い変化が現れることが多い。だが、『社会経験に学ぶ仕組みや授業が学校には少ない』『学びを得るために進んで実行する学生が少ない』という根本的な問題は解決できない。意義のある事業にするには、社会に関わっていける教育をできるだけ多くの人に知ってもらうことが必要だ」
――社会経験の教育をより広めるために必要なことは
「JAEで教育コーディネーターのスキルを持つ人材を育成し、学校の授業との連携を強化していきたい。近年、大学ではPBL(プロジェクト・ベース・ラーニング)という、企業からテーマをもらい、商品企画やプロジェクトを通して学ぶ授業が増えている。しかし、そのプロジェクトの開発や企業と交渉し調整する役割を担える人が学校には少ない。コーディネーターの役目は、社会と若者をつなげるきっかけづくりだ。教育機関の活動に教育コーディネーターのスキルを加えることで、新たなきっかけの場が広がる」
――活動で大切にしていることは
「学生と企業それぞれに『なぜ長期インターンシップをしたいのか』『なぜ学生を受け入れたいのか』という目的を明確に持ってもらうことだ。目的が見えていなければ、根底にある思いを見つける手助けをする」
「いま関わりたいのは中学生の職場体験だ。大阪府内では学校の約95%が3日以上の職場体験を行っているが、現場の作業をするだけでは得られる学びは少ない。現場に関わるだけでなく、その仕事を始めた理由や顧客との関わり方などの背景を知ることが必要だ。そんな経験ができる仕組みをつくりたい」
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