2012.11.24 10:19

【中小企業で働く学生を追う】同志社大3年 今谷実南さん

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記者:廣川大悟

「手書きの文字からは相手の特別な気持ちが伝わってくるし、自分の気持ちを伝えることが出来る。それに手紙を書いている時は静かな気持ちになります」と同志社大学文化情報学部3年の今谷実南(いまたに・みなみ)さん(20)は話す。今谷さんは今年の8月から業務用封筒などの各種紙製品の企画から製造・販売を行うハグルマ封筒株式会社(大阪府堺市)でインターンシップを経験している。インターンを始めたきっかけは「インターネットが普及している今だからこそ、温かみのある手紙文化を」という杉浦正樹社長(49)の言葉に惹かれたことと、今谷さんが小学校時代の同級生と文通を続けていることだ。

インターンの候補も名刺メーカーなど、いくつか残ったそうだが心はずっとハグルマ封筒にあったという。文通は小学校の卒業をきっかけに始め、現在も1カ月に1回のペースで手紙のやり取りをしている。文通を始めて今年で9年目になるので2人の間で交わされた手紙は100通近くになる。文通の相手とは同窓会で1度だけ会い、お互いのメールアドレスも知っているが、電子メールでやり取りはしていない。メールは急ぎの要件で使うものという意識があり、文通のゆっくりとした時間のやり取りを大切にしているからだ。

 インターンを始めて2カ月が経った。今谷さんは同社通販サイト内のプレゼント企画を担当している。プレゼント自体は同社企画部のスタッフが考案・作成したが、プレゼントページの文章や画像の準備を行った。他には商品のラインアップやイベントの企画など緊急ではないが、重要な仕事を任せられることが多い。今谷さんはこれまで、サークル活動やアルバイトを経験したことがなかったため、日々の業務を通して仕事の流れや順序を学べているという。

 まずは自分で考え、どうしても分からなければ社員にアドバイスを貰うように意識している。文通の相手にもインターンの様子を報告したり、イベントの告知をしたりした。

 「自分の思いを適切に表現したい」という今谷さんの目標がある。手紙の良さを実感している彼女ならではの目標だ。同社インターン生担当の五貫圭(いぬき・けい)さんは、「企業は自社のルールに縛られルーチンワークに陥りがち。インターン生の受け入れは今年が初めてだが、学生という価値観から取り組みを見直し、共に新しいものを作っていきたい」と話した。

〈取材後記〉
 mixiやfacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の台頭によって、他者と意見交換する機会が増えている。先日、私の友人が21歳の誕生日を迎えたが、彼への寄せ書きもfacebook上で募集した。日常生活で手紙を書くことはほとんどない。新年に親しい友人から届く年賀状への返事を書くぐらいだ。しかし、今回の取材を通して“人に思いを伝えること”を意識するようになった。現在、12月からの就職活動に備え自己PRや自分のエピソードを書く練習をしている。この取材までは文章を書いている時に自分しかイメージしていなかったが、今は面接官の顔を思い浮かべて書いている。「相手に気持ちを伝える点では履歴書も手紙と同じ」と考える様になると、自然と上手く書けるようになった。

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記者プロフィール

廣川大悟

廣川大悟

役職 : 甲南大学桐畑ゼミ代表
卒業 : 甲南大学マネジメント創造学部
出身地 : 愛媛県今治市
誕生日 : 1991年11月29日
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