NPO法人チュラキューブ(大阪市北区)は、社会貢献プロジェクトの立案や教育コンサルティングを行う。ホームページやチラシといったコンテンツを作成する一方で、学生や障がい者の就職状況の改善などに取り組んでいる。「地域の問題をクリエイターや学生とともに解決している」と話す中川悠(なかがわ・はるか)代表(35)に、編集者時代の経験を生かした活動について聞いた。
ともに悩み地域の問題解決
=前職での経験と学びは
「関西地方の若者向け情報誌の編集に携わっていた。春なら花見、夏なら花火といった毎年決められたテーマのなかで部数を伸ばすため、カメラマンやライターが持ち寄った情報を吟味し、想定する読者に合わせたデザインやテーマを提案した。現在コンテンツを作成する際も、誰に見てもらい、どう伝えればよいのかを常に意識している」
=チュラキューブ設立に至った経緯は
「編集者としての活動を続けながら、2004(平成16)年にアートギャラリーを大阪市大正区で開業し、展覧会を企画したことで、カメラマンや仏像彫刻家といったさまざまなクリエイターに出会えた。しかし関西では東京に比べ仕事が少なく、みんな苦労していた。そこでクリエイターの仕事獲得の手助けができる組織を作ろうと、07年にチュラキューブを設立した」
=事業内容は
「コンテンツの作成を通じて培ってきたノウハウやネットワークを生かし、行政や教育機関などが抱える問題の相談に応えている。09年には、大阪府豊中市の障がい者福祉施設と協力してロールケーキを製造・販売。売り上げよりも、地元に受け入れられるためのデザインや広報を重視した。ハスの花をイメージしたパッケージはクリエイターが考案し、メディアへの発信は龍谷大学の学生に協力してもらった。新聞やウェブ、ラジオでも取り上げられ、豊中市役所が就職情報を提供してくれるようになった」
=学生への支援は
「若者の就職難の背景にある、社会人基礎力の不足や中小企業との雇用のミスマッチといった問題を解決してほしいと大阪府から依頼を受け、学生が企業のチラシを作成するプログラム『ガチターン』を昨年の夏から開始した。学生は企業を取材してから情報を取捨選択し、チラシのラフを何度も書き直す。その2週間の工程の後でクリエイターが仕上げ、実際に企業が使用する。大企業志向だった学生たちは中小企業の魅力に気づき、企画書の作成やプレゼンテーションでも必要な、相手の話を理解し伝える能力を身に付けていく」
=現在注力するプロジェクトと、その展望は
「あるニュータウンで、生活水準の違いによる住民同士の不和の解消に取り組んでいる。阪神・淡路大震災やリーマンショックの影響で地価が下落し、旧住民と新住民で街が二分されてしまった。豊かな家庭で育ってきた若者が、スーパーにジャージ姿で買い物に行く新住民に違和感を覚えるなど、意識に差が生じている。毎週約20人の住民にヒアリングするなかで、街の活性化に興味がある若い母親や、子どもとの触れ合いを望む高齢者がいることが分かった。今年8月に開かれる夏祭りでは、若者や高齢者とともに企画したワークショップを開催し、交流を通じて理解を深め合ってもらう予定だ。人との出会いにこそ価値があり、一緒に悩むことで大きな学びも得られる。これまでの経験を生かしながら、地域の問題解決の手助けを続けていきたい」
(学生通信社 大阪大学 穴吹美緒)
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