2014.04.22 12:15

【学生記者が行く】「福市」高津玉枝代表に聞く

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記者:穴吹美緒

2006年に設立された福市(大阪市西区)は、フェアトレード商品のセレクトショップ「LOVE&SENSE」を、百貨店をはじめとする商業施設で展開している。発展途上国の支援につながるフェアトレード商品や、東日本大震災の被災地で作られた商品を販売。また、インド、カンボジア、ブラジル、コロンビア、ネパールなどの商品も扱っている。「作り手の思いを買い手に伝え、買い物の新たな楽しみを提案したい」と話す高津玉枝代表に、活動の指針や商品へのこだわりについて聞いた。


――従来のフェアトレードショップとは違うスタイルだ

 「フェアトレード商品は、社会問題に関心のある人が購入するのがまだ一般的だ。当社ではファッションへの関心が高い人を対象に、機能性やデザインにこだわった商品を販売し、社会問題について知るきっかけにしてもらっている」

 「リサイクルのプルタブ(缶飲料の開口部)を原料に編まれたバッグは、ニューヨーク近代美術館のショップでも扱われている。アルミなので丈夫で軽く、体になじむ。これらの商品はブラジルの経済的に貧しい地域に暮らす女性たちによって、手間をかけて作られている。現在、阪急うめだ本店の直営店での販売のほか、オンラインでも取り扱っている」

 ――当初は受け入れられなかった

 「1991年にマーケティング会社を起業したが、バブル経済の崩壊で大量生産・大量消費に疑問を感じるようになった。多く売るために値段を下げるばかりでは、立場の弱い生産者などにしわ寄せが及んでしまう。2000年にフェアトレード商品と出合い、品質や値段だけでなく、作り手の境遇や込められた思いが重視されていることに魅力を感じ、06年に当社を設立。ロフト名古屋(名古屋市中区)でフェアトレード商品のショップをイベントとして開くことになった」

 ――売れ行きについて

 「実際に販売してみると思うようにいかず、売り上げが数百円の日もあった。お客さまに『どうすれば買いたいと思うか』を直接聞いて試行錯誤を繰り返し今にいたっている」

 ――商品販売でこだわっていることは

 「商品を取り扱うときは、できる限り生産現場を視察するようにしている。何が原因で貧困が生まれているのかを肌で感じ取れるほか、生産者が手間を掛けて商品を作り上げていることも実感できる。買い物では値段や品質ばかりが見られがちだが、私たちが間に立って伝えることで、作り手が込めた思いをお客さまにイメージしてもらえればと考えている」

 ――海外で元気をもらって帰っている

 「昨年の夏にカンボジアに行ったとき、ある夫婦に出会った。カンボジアでは内戦で多くの人が命を落としており、国民は貧しく教育レベルも低い。夫は貧しい農村から都会に出て、道路の掃除やタクシーの運転手、ホテルの仕事を経て、現在は夫婦でお店を経営している。この夫婦は自分たちの生活も決して裕福ではない中で、仕事を求めて都会に出てきた若者を無償で家に住まわせて面倒を見ている。こうした光景を見るたび、日々の会社経営で落ち込んでいる暇はないと感じる。現在彼らの支援のために、新しいプロジェクトが進行中だ」

 ――11年から東北支援事業を始めた

 「被災地の女性にハートのブローチを編んでもらい、生産者グループに売り上げの半分を届ける『EASTLOOPプロジェクト』を作ってきた。人は仕事を通じて認められたり感謝されたりすることで、生きることの価値を見いだせる。震災から3年がたとうとしているが、被災地にはまだまだ応援が必要。買い物が誰かの幸せにつながっていると実感できるような取り組みをさらに加速させ、次の時代につなげていきたい」

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記者プロフィール

穴吹美緒

穴吹美緒

役職 : -
在学中 : 大阪大学文学部(3回生)
出身地 : -
誕生日 : 1992年10月14日
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